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夢の硝子玉
15
「おかえりなさい。
まぁ、ダグラスさんも来て下さったのね!
ダルシャ、あの方は…?」

「あぁ…彼のことなら気にしないで下さい。」

「本当に良いの?」

リュシーは、駆け出したラスターの後ろ姿をぼんやりと見送った。



夕食の席で、ダルシャは魔物の森のこと、そこに住まう者のことを包み隠さずリュシーに語った。
ダグラスは、そんな彼の様子を心配そうにみつめる。



「まぁ…!そんな事が…!?
森の中にお一人で暮らされてるなんて、本当にお可哀想だわ。」

リュシーは意外な程に、獣人のことについて少しも驚いてはいなかった。



「それで、なんとしても彼をイグラシアの獣人の村に連れていきたいと思うのですが、それには少しばかり金がかかるのです。
私はこれから先の路銀が必要ですし、申し訳ないのですが…」

「わかりました。
そんなことなら、まかせて下さい。
ですが、ダグラスさんだけで大丈夫なの?」

リュシーはダルシャの言わんとすることを察し、途中でその言葉を遮った。



「ええ、その点なら大丈夫です。
このフレイザーが着いていきますから。」

「えええーーーっっ!」

何も知らされていなかったエリオットとセリナの驚きの声が重なった。



「そういうこと。
だから、心配するな。
……ただ、また船に乗るのかと思うと、少し気が重いんだけどなぁ…」

フレイザーは胃のあたりをさすりながら、瞳を伏せた。



「そんなことなら心配いらんぞ!
わしの乗り物酔いの薬を飲めば、酔うことはない。」

「本当かい!それは助かったぜ!」

「こっちこそ。
あんたが一緒に来てくれるなら、心強い。
……しかし、本当に良いのかい?」

「もちろんさ!」

皆の顔に微笑が浮かんだ。




「本当に良かったわね。
あら…そういえば、明後日はイグラシア行きの船が出る日じゃなかったかしら?」

「そうなのです。
それを逃したらまたしばらく待たねばなりませんから、明日の夜遅くには森を出て、次の朝早くに港に着くようにしなくてはなりません。
夜中ならカインがみつかることもないでしょうからね。」




次の朝、ダルシャ達は魔物の森を目指して屋敷を後にした



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