お題小説
20
*
「ミシェル、あたし、やっぱり行くよ!」
カーラは、数日考えたが、やはりクロワに伝えないままでは、もやもやして気持ちが悪いと言い出した。
「あたしがクロワだったら、やっぱりどんな情報でも聞きたいと思うもの。
役に立たない情報かもしれないけど、クロワの探してる人が生きてるって希望に繋がるかもしれないしさ。」
「……わかったよ。
おまえがそこまで言うなら、俺もついていくさ。」
「大丈夫だよ。
足はもうそんなに痛まないからさ。」
「行くって言ってんだろ!」
「……ミシェル…」
クロワが今、どこにいるかはわからない。
2人はとりあえず夏至祭の町へ向かうことにした。
*
やがて、二人はカーラの働いていた町に着いた。
「懐かしいね…」
「そんな気持ちになるにはまだ早いんじゃないか?」
「懐かしい気持ちに早いも遅いもあるもんか。
ここにはけっこう長い間いたからね。」
「……俺はあんまり来たくない場所だな…」
「……そんなこと言ったって、過去は消えてなくなったりはしないんだよ。
あんた、私のやってきたことをわかった上で好きだと言ってくれたんだろ?」
「そりゃあ、そうだけどな…」
町を歩くと、男達が気安くカーラの名前を呼ぶ…
そんな光景は、やはりミシェルにとってはあまり嬉しいものではなかった。
「おやまぁ!カーラじゃないか!」
珍しく女の声がカーラを呼んだ。
「あ!あんたは…えっと…」
「アマンダだよ、あん時は世話になったね。
私の店はすぐそこさ、一杯飲んで行きなよ。」
早くクロワに伝えたいという想いはあったが、ちょうど一休みしたい時でもあった。
少しくらいならかまわないだろう。
2人はアマンダに促されるまま、店に入った。
あの時のお礼だと言って、アマンダが2人に酒を出してくれた。
「なんだって!
じゃ、クロワの探してる人じゃなかったのかい!」
カーラは、自分と一緒に町を出た赤毛の男はこのミシェルで、クロワの探してる人ではなかったことを話した。
アマンダはひどく驚き、クロワのことを心配している様子だった。
カーラは、さらに、自分達は薔薇の村で見た男のことをクロワに伝えたくてクロワを探しており、夏至祭の町に行く途中だと言うことを話した。
「なんだって?薔薇の村?」
カウンターの隅にいた男が驚いたように声をあげた。
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