お題小説 10 * 「ねぇ、表にはやっぱり赤だよね。 それとも黄色も混ぜた方が良いかな?」 「俺はどっちだって良いぜ。」 「チェッ!もう少し真剣に考えてくれても良いじゃないか。 あんたって愛想のない男だね、まったく。」 花にはほとんど関心を示さないミシェルに、カーラはいささか腹を立てていた。 「本当に頼りにならないっていうか、なんて言うか…」 カーラは、一人ブツブツと愚痴をこぼしながら、庭に植える薔薇を品定めしていた。 その時、ふと顔を上げたカーラは、一瞬、目を大きく見開き、手持ちぶさたに店内をうろつくミシェルに駆け寄った。 「ミシェル!!」 「もう決まったのかい?」 「違うんだよ! あそこにいる男…見てよ。」 「どいつだ? 知り合いでもいたのか?」 ミシェルはカーラがあごで示した男を見た。 「どっちだ?」 「赤毛の方さ。」 「あいつがどうした?」 「あんたと年格好がすごく似てないかい?」 「言われてみれば、そうだな。 あ…!もしかして!!」 「そうなんだよ! クロワの探してた男じゃないかと思ってさ。」 「…確か、オッドアイだったって言ってたよな。 ここからじゃわからない。 近くに行って確かめてみよう。」 「では、代金を… 釣りはいらない。」 「それは、それは… 誠にありがとうございました。」 「すぐに帰るか?」 「…………」 「オーバン…どうかしたのか?」 「振り向くなよ… おまえの後ろにいる奴らの様子がおかしい…」 「…どんな奴らだ?」 「若い女と赤毛の男だ…」 「…そんな知り合いはいないと思うが… 私の知り合いなんだろうか?」 「どうも奴らの態度は普通じゃないぞ。 …ヤバイ!奴らが近付いてくる! マルタン!走れ!薔薇の木を落とすなよ!」 マルタンとオーバンは一目散に走り出した。 「あっ!!」 「ミシェル!追い掛けるよ!」 人混みをかきわけながら、村の中を走り抜けるマルタンとオーバン。 そして、それを追うカーラとミシェル… 「あ……」 カーラのサンダルのベルトが切れ、カーラはバランスを崩しミシェルを巻き込んで倒れこむ。 「あ…いててて…」 「大丈夫か、カーラ?」 「畜生!こんな時に…」 その間に、2人の姿は見えなくなっていた。 仕方なくミシェルは足を痛めたカーラをおぶって家路に着いた… [*前へ][次へ#] [戻る] |