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お題小説

「大丈夫よ!ジャン!
私にまかせてちょうだい!」

私の物思いを中断させたのは、クロワの力強い言葉だった。

夢から覚めたようにしている私に向かって、クロワは言葉を続けた。



「マルタンさん!
私、今夜、この杯をほこらに戻してきます。
その間、お母さんの看病をお願いします。」

「えっ!」

「私にまかせて」…というのは、そういうことだったのか…

「それは危険だ。
もしみつかれば、あなたが犯人だと思われてしまうかもしれない。
そうなれば、どんな目にあうか…
それに、もしあなたのいない間にあの人に何かあったら…」

「大丈夫です。
小柄な私ならみつかりにくいはずですわ。
それに、お母さんも今は小康状態を保っています。
看護も決まった時間に薬を飲ませてタオルを取り替えて下されば良いだけですから…」

「…しかし…」

「大丈夫よ、ジャン!
お姉ちゃんがちゃんと元の場所に返してきてあげるから、もう心配ないわよ!」

「……お姉ちゃん…ありがとう…」




この杯が、どれほどジャンの心の負担になっていたかということをクロワは理解していたのだ。

それにしても、なんという決断力と実行力か…

それは、一刻も早くジャンの心を軽くしてやりたいと思う気持ちからなのだろうか…




「…じゃ、行ってきます!
お母さんのこと、お願いしますね。
どうか心配しないで下さい。」

「…お気を付けて…」

私にはそう言うしかなかった…

クロワは本物の夜光珠の杯を手に村に向かった。
今から出掛ければ、村に着くのはちょうど真夜中になるだろう…

ジャンの話によれば、ほこらには簡単な鍵しかかかっておらず、その前に老人がいただけだったという。
老人がその場を離れた隙に鍵を叩き壊して入ったそうだが、今回もそううまくいくかどうか…



(…どうか、みつかりませんように…!)

私は心の中で、神にそう祈った。



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