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お題小説

「それは、良くないことを言ってしまいましたね…
しかし、子供ならとっさにそう言ってしまうのも無理からぬことかもしれません。
…それで、旅の男性はどうされたのですか?」

「その男性は番人に殴られ、それからどこかへ連れていかれました。
私は家に走り帰りましたが、彼が本当のことを話せば、そのうち私の風貌から私の素性が知れ、そして私を捕まえにうちにやって来るに違いないと思いました。
どこかに逃げようか?…そうも思いましたが、行くあてもありません。
私は部屋の隅で毛布にくるまってガタガタと震えていました。」

「ご家族には話されなかったのですか?」

「ええ…家族はもう眠っていましたし、そんなことが知れたら両親にまた叱られる…そう思うと話せなかったのです。
私は眠れぬままに朝を向かえました。
いつ私を捕らえに来るのだろう?
私はどんな罰を受けることになるのだろう?…そんなことを考えると、恐ろしくてたまりませんでした。
でも、何も言えないまま、私は両親と一緒にいつものように畑に出ました。
昼頃出会った顔見知りのおじさんが、水晶玉が昨夜割れたことを話していました。
その話を聞いて私は気分が悪くなり、一人で家に帰ったのです。
夕食の時に両親が、水晶玉の話をしていました。
割ったのは旅をしていた若者だということでした。
父は、あんな大切な水晶玉を割った奴は縛首にでもされれば良いんだ!と憤っており、私はその言葉を聞いて自分のしたことになおさら恐怖心がこみあげてまた気分が悪くなってしまいました。
なぜ、あの男性は私のことを言わないのだろう?
もし、あの男性が父の言う通り、縛首にでもなってしまったら、私はどうしたら良いのだろう?
本当のことを言わなければ!と思う反面、言えば私が縛首になるのではないかと思い、怖くて言えなかったのです…」

「それで、その男性は縛首に…?」

「いえ…幸いなことに村長は慈悲深い人でした。
男性はわざとやったのではなく、誤って落としたのだから…ということで、村のはずれの山の牢獄にいれられることになったのです。」

「男性はあなたのことをかばったのですね…」

ケヴィンは深く頷いたまま、頭を上げなかった。



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