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お題小説
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「イシドール、落ち着け!
確かに俺がおまえの母さんのことを知ったのはずいぶん後になってからのことだ。
俺はある時、仕事先で訪ねた町でルイスに会った。
覚えてるか?
おまえを一番いじめてたピーターの父親だ…」

「ああ、あいつならよく覚えてる。
あいつら親子が引っ越した時、俺はどんなに嬉しかったことか…」

「久しぶりだったこともあって、その晩、俺はルイスと飲んだんだ。
そして、その時におまえの母さんの話を聞いた。」

「川に身を投げたことか?」

「違う…
あの日、いつものようにおまえを追い掛け回していじめていたがピーターが足を滑らせて川に落ちたんだそうだ。
それを見たおまえの母さんは川に入り、必死でピーターを探し、そしてやっとの思いで救いあげた。
しかし、ピーターを母親に手渡すとそのまま力つきて流されてしまったらしいんだ…
ピーターの母親は、泳げない上にピーターのことで頭がいっぱいで、おまえの母さんが流されたことにも気が付いていなかったそうだ。」

「そ、そんな…まさか…」

「ルイスは奥さんと子供からその話を聞いた。
やがて次の日になっておまえの母さんの遺体が引き上げられた…
町の者達は身を投げたんだと勝手な噂をした。
ルイスは真実が言えなかった。
言えば、今度は自分達もいじめられるかもしれない…村八分にされるかもしれない…それが怖くて言うことが出来ず、かといって真実を押し黙っていることが心苦しく、とうとういたたまれなくなって町を去ったと言っていた。
おまえやおまえの母親にはとても申し訳ないことをしたと、奴は泣き続けていたよ。」

「そんな…そんなこと…」

「イシドール!!」

イシドールは混乱した頭を抱え、浜辺まで走っていた。

今まで自分が信じてきた記憶はなんだったのか…

真実は違っていた…
両親は愛し合い、そして自分は生まれてきた…

両親にはとても愛されていた…

そして、母親は自殺等ではなかった…

命を賭けて子供を救って力つきてしまったのだ…

それも、今まで我が子をいじめ続けていたろくでもないよその子を…



今になってやっとわかった。
自分の母親の偉大さが…

そして、恥じた…悔やんだ…

この歳になるまでずっとそんな母を、父を恨み続けていたことを…

「母さん、ごめんよ…
俺を許してくれ!!」



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