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お題小説

私は、川に沿って先日泊まった町まで戻った。
遠い所でなくて本当に良かった。
おそらく、夕方までには戻れるだろう。

町の食料品店で様々な物を買い込んだ。
魚を売っている店もあったが、イシドールは魚が嫌いなようだった。
いや、「嫌い」というのとは違う。
どう言えば良いのかわからないが、何か特別の理由があって食べないのではないかという気がした。

店先でそんなことを考えていると、店の奥で食べていかないかと声をかけられた。
到底レストランとは呼べるような店ではなかったが、それらしきことをしているようだ。

朝から何も食べていないこともあって私は店内に入った。
狭い店内には客は1人きりだった。
髭を生やした年配の男だ。

「あんた、竜の滝を見に来たのかね?」

老人は私を見るなり声をかけてきた。

「いえ…私は、この先の大きな町に行こうと思いまして…」

「仕事かね?」

「まぁ、そのようなものです。
ところで、竜の滝とはどこにあるのですか?」

「この町沿いに大きな河があったじゃろ?
あの河を遡っていけばすぐじゃ。」

「竜の滝という位ですから、何か竜にまつわる伝説でもあるのですか?」

「その通りじゃ。
竜の滝の滝壷には、昔、このあたりの守り神の竜が住んでおり、そのおかげで作物は豊富に実り人々は幸せに暮らしていたんじゃ。
ところが、ある時、ある男がその守り神である竜を殺してしまったんじゃ。」

「なぜ、そんなことを!?」

「町を守り、繁栄させてもらうため、竜には毎年生贄として若い娘を捧げていた。
その年は、男の一人娘が生贄になったからなんじゃ。
男は娘を捧げるのがいやさに、守り神である竜を殺したんじゃ!」

老人はまるで昨日のことのように熱を込めて語った。

「その後、竜の神の祟りによって滝壺の水嵩は増し、一晩にして川幅は何倍にもなり、田畑はすべて水没し多くの人々が亡くなった…
それ以来、この町では作物はほとんど実らなくなってしまったんじゃ…」

「なるほど…そんな伝説が…」

「伝説なんかじゃありゃあせん!
これは本当の話なんじゃ…
その証拠に、今でも竜を殺した男の末裔がおるんじゃ。」

「まさか!」

「本当じゃ!
隣町の町はずれに一人で住んでおる。」



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