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お題小説
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次の日…
昼近くになって、エドモンがクロードの部屋からやっと出てきた。

今日は体調が良いのか、機嫌も良さそうだった。

エリックを膝の上に乗せ、ミューズをつま弾いて遊んでいる。

エリックもいつもとまるで変わったことなく、無邪気な微笑みを称えていた。

昨日、クロワが言っていたことは、やはりクロードに感化された子供の戯言だったのだ…

私はエリックを見ながら、そんな風に感じていた。



……やがて、夕食が済んだ頃のことだった。

「お母さん…僕…行かなきゃ…」

「エリック、どこに行くって言うの?
もうお外はまっ暗よ。」

「お母さん…いつかまた会えるかどうかわからないけど…
元気でいてね…」

「な、何を言ってるの?
エリック…あなた、なにをするつもりなの?」

「父さんとの約束なの。
ごめんね、お母さん…
僕のこと…忘れないでね。」

「な、な、なにを…」

ジゼルの様子がおかしい。
うまく息が出来ないようで、顔色がどんどん青ざめていく…
手足は硬直してきているようだ。

「ジゼルさん、しっかりして!!
マルタンさん、ジゼルさんをそこの長椅子へ!」

クロワに言われる通りに、私はジゼルを抱き抱え長椅子に寝かせた。

クロワはジゼルの口に息を吹き込み、人工呼吸のようなことをしていた。

私は何をしたら良いかもわからず、その場に立ち尽くし、ジゼルの様子を見守ることしか出来なかった。

「……大丈夫よ、ジゼルさん。
心配しないで…」

しばらくして、ようやくジゼルの症状が落ち着いて来た。
顔色はまだ良くはなかったが、先程のようなことはないようだった。

「……エリックは?
エリックはどうしてますか?」

「あ…あぁ、彼ならエドモンと眠ってますよ…」

「本当ですか?」

「ええ、本当ですよ。
心配はいりません。
子供は時に突拍子のないことを言い出すものです。
なんでもありませんよ。」

「…そうですか…」

そこへ、クロワが薬を持ってきた。

「さぁ、ジゼルさん、これを飲んで下さい。」

ジゼルは素直に薬を飲んだ。

「ジゼルさん、ゆっくり眠って早く元気になりましょうね!」

「ええ…」

薬を飲むと、ジゼルはすぐに規則正しい寝息を立て始めた。
私はジゼルを抱え、部屋のベッドにそっと寝かせた。



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