天使からの贈り物
12
「ディック!!」
自警団の詰め所に血相を変えたスージーとラリーが駆け付けた。
「ジュリアン!どうしてここへ?
ディックは…ディックはどこなんだ?」
ジュリアンは黙って首を振る…
二人はその仕草で全てを悟ったらしく、みるみるうちにその顔からは血の気が引いていった。
「まさか…まさか、本当にディックは…」
スージーは、その場に座りこみ両手で顔を覆って泣き出した。
「ジュリアン、ディックは本当に死んじまったのか?」
「あぁ…ほんの少し前にな…
ベルトに首をかけて…」
「ディック…馬鹿野郎!!
なんだって、そんなことを…!!」
ラリーは、泣きじゃくるスージーを抱き抱えるように支えながら、その場を後にした。
ジュリアンは、ただ呆然と立ち尽し二人の後姿を見つめる…
「可哀想に…ラリー達もショックだったろうな…」
不意に聞こえた声にジュリアンが振り向くと、そこには見慣れた顔の男が立っていた。
「あんたもラリー達とは仲が良いのか?」
「俺はラリー達より年もずっと上だし特別仲が良いって程じゃないが、家が近かったから昔から奴らのことはよく知ってるんだ。」
「そうだったのか…ラリー達とディックは幼馴染なんだってな?」
「あぁ、そうだ。
ラリーとディックは年が同じだし、どっちも親と縁が薄くて小さな時から苦労しててな。
そんなこともあって、奴らは特に仲が良かったみたいなんだ。」
「でも、最近はうまくいってなかったんだろ?
何かあったのか?」
「それは…まぁ、ある事件のせいなんだ。」
「ある事件?」
「うん…もうずいぶん昔のことなんだが、祭りのために集めた寄付がなくなったことがあったんだ。
その時、ちょうどディックの母親の具合が悪くなってな…でも、奴の家は母一人子一人で家が貧しく医者も呼べないような状況だったんだ。
それなのに、ディックはどこからか医者を連れて来た。
そのおかげでディックの母親は幸い持ちこたえたが、結局はそれからしばらくして死んじまったんだ。
で、なくなった寄付金は、きっとディックが盗んだんだって噂が流れてな。
疑いたくはないが、やっぱりそうとしか思えないよな。
実際のところはわからず仕舞いなんだが、そんなことがあってあの頃から、皆、ディックとはあまりつきあわなくなったみたいだぜ。
それで、奴もいたたまれなくなったのか隣町に引っ越したんだ。」
「そんなことがあったのか…
……いろいろ教えてくれてありがとうよ。」
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