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天使からの贈り物
20
「ハリー、行くぞ!」

「い、行くって、どこへ?!」

「決まってるだろ!マージを探しに行くんだよ!」



激しい嵐の中、ハリーとジュリアンは雨風に逆らいながら必死で歩いて行く。



「ハリー、マージと一緒に川に行ったことはないか?」

風雨の音に負けないよう、叫ぶようにジュリアンが尋ねた。



「川…?
川なんて特には…」

「じゃあ、川の近くは?」

「なんで、川なんだ?」

「とにかく川なんだよ!
ないのか?何か、二人の思い出みたいなものは…!」



苛立つジュリアンの声に、ハリーは記憶の糸をたぐっていた。



「……もしかしたら…」

「あるのか?!」

「あぁ…たいしたことじゃないんだけどな。
川辺りに咲いてた百合の花を見て、マージに言ったことがある。
『あの百合はおまえみたいな花だな。』って…
百合の花の色と、マージの髪の色がそっくりだったんだ。」

「そこだ!!
それはどこなんだ!?」

「こっちだ!」



ハリーについて、その場所へ走るうちに、ジュリアンは増水して茶色く濁った川の中に見え隠れする女性の姿を見つけた。



「ハリー!!あれを!」

「マ、マージ!!」


一瞬も躊躇うことなく、ハリーは川の中へ飛びこんだ。



「ハリー!!」



川の流れは速く、ハリーはなかなかマージの元へ辿りつけない。
ジュリアンは、流される二人について川沿いを走る。
ハリーの逞しい腕が水をかき、少しずつマージの傍に近付いていく。



「ハリー、頑張れ!!
もう少しだ!!」



ジュリアンの声が、ハリーの耳の届いたかどうかはわからないが、それからしばらくしてハリーはやっとマージに辿りつくことが出来た。



「ハリー!!頑張れよ!」



ぐったりとしたマージを抱えながら、ハリーが少しずつ川岸へ近付いて来る。
ジュリアンは、大きな声でハリーを励ましながら、川岸で
二人を待ち構えた。
ハリーは次第に川岸に近付き、ようやくジュリアンの手の届く所まで来ることが出来た。



「よし!引き上げるぞ!」



ハリーの懸命の救助により、マージの身体はようやく引き上げられた。
しかし、その身体は氷のように冷たく、動く事もなくまるで死んでいるみたいだった。
ハリーの疲労も相当に酷い。



「ハリー、大丈夫か?!」

「俺なら大丈夫だ。
それより、マージを早く…」

「しかし…」

「良いから早く行ってくれ!!
俺なら…大丈夫だ…」

「わ、わかった…」



ハリーのことは心配だったが、今はハリーの言う通り、マージのことが最優先だ。
ジュリアンは、マージを背負うと宿屋に向かって走り出した。


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