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天使からの贈り物
12
エレスに啖呵を切って部屋を飛び出して来たのはいいが、ジュリアンの頭の中に二人の仲を取り持つ策があるわけではなかった。



(畜生!どうしたら良いんだ?
…そうだ!とりあえずは、ハリーと顔見知りにならなきゃ始まらない!
ハリーを探そう!)



ジュリアンはハリーの姿を求めて、町を歩く。
例の酒場にいるのではないかと思い立ち寄ったが、残念ながら酒場にはいなかった。
仕方なく、町の中をとぼとぼと歩いていると、町外れでハリーの姿を発見した。



(そうか、ここがハリーの家なんだな!)



「じゃあ、母さん、すぐに戻って来るからな!」

家の中から出て来たハリーにみつからないように、ジュリアンは咄嗟に物陰に身を隠す。



(ゆっくり考えてみよう…
ハリーは、マージがケネスと結婚することが幸せだと考えている。
まぁ…それも無理のない話だよな。
ケネスって奴は金持ちらしいから。
ハリーは職も無く、病気のおふくろさんを抱えてるんだ。
俺だってそう考えるよな。
……いや!でも、金持ちと結婚することが幸せとは限らないぞ!
金持ちでもひどい奴がいるんだからな。
金があったって幸せとは限らないんだ…
そうだ!それだ!それで行こう!)



ジュリアンは、その場でじっとハリーの帰りを待った。
しばらくすると、袋を抱えたハリーが戻って来るのが見えた。
その姿をみて、ジュリアンはわざとハリーにぶつかった。
ハリーの持っていた袋が、彼の手を離れどさりと落ちる。



「あ!すまねぇ!」

「いや…大丈夫だ。」

「あ…卵が割れてるじゃないか!」

「あ……まぁ良いさ。
家にまだ少しあるから。」

「弁償させてくれよ。」

「そんなの良いさ。」

「それじゃ、俺の気が済まない。
頼む、卵を売ってる所まで連れて行ってくれ。」



ジュリアンは、そんなことはしなくて良いというハリーにしつこく食い下がり、説得する。
根負けしたハリーは、家の中に袋を置くと、ジュリアンを雑貨屋へ案内した。



「本当に済まなかったな。」

「いや、こっちこそ…」

雑貨屋で卵を買ったジュリアンは、それをハリーに手渡した。



「ところで、ちょっと酒が飲みたいんだが、このあたりに酒場はあるか?
俺、この町に来たばかりでよくわからないんだ。」

「あぁ、酒場なら…」

「せっかく知り合ったんだ。
良かったら一杯やらないか?」



ハリーは、ジュリアンの目論み通りにその誘いに乗ってくれた。



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