天使からの贈り物 5 * 「あ、あとしばらく滞在することにしたから、よろしく頼むよ。」 「かしこまりました。」 「それと…」 「何か…?」 「あ…あぁ…なんでもないんだ。」 マージにハリーのことを話そうかと考えたジュリアンだったが、またあんな悲しい顔をされるかと思うと、やはり言うことは出来なかった。 ジュリアンは、昨日ハリーに教えてもらった場所に向かうと、早速、採掘作業を始めた。 これといって特別な石は出て来なかったが、1つだけ大きなガーネットがみつかった。 (これは、けっこう良質な石だ! ……そうだ…!) ジュリアンは、ガーネットを見ながら突然ひらめいたアイディアに一人ほくそ笑む… * 宿に戻ってしばらくすると、ハリーがジュリアンの部屋を訪ねた。 「ハリー!よく来てくれたな! ちょうど良かった!」 「なにかあったのか? 実は、今日はちょっとあんたに頼みたいことがあってな。」 「俺に頼みたい事?一体、何なんだ?」 「俺は明日の朝、この町を発つ。 それで、俺がいなくなった後、これを…マージに渡してほしいんだ。」 「なんで自分で渡さないんだ?」 「それは…やっぱり言いにくいじゃないか。 頼むよ。」 「そうか、わかった。 で、中身は何なんだ?」 「たいしたもんじゃない。 それと、すまないんだが、俺がこの町を出て結婚することもあんたからマージに伝えてくれないか?」 「それも俺が言うのか?!」 「あぁ、頼むよ… それじゃあ、俺、これからちょっと用があるから… じゃあな!」 「あ…あぁ…」 そそくさとその場を立ち去るハリーを見送り、ジュリアンは長椅子に腰を降ろし、小さな溜息を吐いた。 「あ〜ぁ…やな役ひき受けちまったなぁ… マージ、きっと哀しむだろうなぁ…」 『ならば、なぜ、断らなかった?』 「そうは言っても、ハリーもきっと俺以外に頼める奴がいなかったんだろうしなぁ…」 『おまえは本当にお人好しだな…』 「仕方ないだろ! そういう性分なんだから…! さてと、今夜はもう寝るか…」 『早寝の割にはいつも起きるのは遅いんだな。』 「俺は、そういう体質なの!」 明日、マージにハリーの言伝を話さなくてはならないことを考えると心は重かったが、そんな悩みがあっても横になるとすぐに眠れるというのも、これまたジュリアンの体質(?)だった… [*前へ][次へ#] [戻る] |