4 「なぁ〜んだ!は、ないだろ! よく考えてごらんよ。 君、今までそんなことあった? 好きな人とたまたま曲がり角でぶつかるなんてこと、あった?」 「…そりゃあ、ないけど…」 「でしょ? ああいうのはめったにないことなんだよ。 よくあるのは漫画と小説の中だけさ。 だから、それが、叶うなんてすごいことだよ! ちょっとは感謝してくれなきゃ!」 「そ…そうよね!ありがとう!」 「……意外と素直なんだね。 とにかく、僕が必ず君と架月君をぶつけてあげるから、そこから先は君の頑張り次第だよ!」 「えっ?!頑張ればなんとかなる?!」 「なるかもしれないし、ならないかもしれない。 僕はキューピッドじゃないからそこまではわからないけど、きっかけを生かすも殺すもそれは君次第なんじゃない?」 「そうね!あんたの言う通りだわ! イヴにはまだ1週間程あるし、希望はあるってことよね!!」 「そうそう!その通り!」 「ありがとう〜!! 本当にあんたには感謝してるわ! みかん食べて!私がむいてあげるから!」 「いいよ、みかんは…」 「そんなこと言わないで! 冬はビタミンCを採った方が風邪ひかないのよ! あんた、これからもいろんな人のお願い事叶えに行くんでしょう?」 「僕、妖精だから風邪なんてひかないし…」 「はいはい!!ごちゃごちゃ言ってないで食べなさいって!」 雪美は、せっせとみかんをむいてはトナカイの口に詰めこんだ。 「さぁ、こうしてはいられないわ! 頑張らなくっちゃ!」 気合いのこもった独り言を残して、雪美は部屋を出て行った。 (ふぅ〜…困った子だね…) 口いっぱいのみかんを飲みこんだトナカイは、壁をすり抜け遥か彼方の空へ戻っていく。 雪美のこの先のことを想像しながら… [前へ][次へ] [戻る] |