4 (少し休もう…) エリオットは、出来るだけ花を潰さないように気を付けながら、そっと腰を降ろした。 ずいぶん長く歩き回った筈なのに、不思議と疲れていないことを訝しく感じていた。 疲れ果てたのは、身体よりもむしろ心の方だった。 ここには誰もいない… この広い花畑にいるのは自分一人… それを意識すると、エリオットは心細さに押し潰されそうになった。 エリオットは静かにその場に身を横たえる。 花の絨毯がエリオットの身体を優しく抱きとめた。 (ありがとう…君達は優しいね…) 目の前の花に心の中でそう呟くと、エリオットはそのまま眠りにおちた。 * どのくらい眠っていたのかはわからなかった。 エリオットが目を覚ました時、あたりの景色は何一つ変わってはいなかった。 ただ、眠ったことで落ちついたのか、ほんの少しだけ、エリオットの気持ちに小さな光がさしていた。 (……やっぱり、僕は死んだんだね…) 納得した筈なのに、そう思うとまた涙がこぼれて落ちる。 エリオットは頬の涙を指で拭うと、ゆっくりと立ちあがりあたりを歩き始めた、 もう声をあげることはしない。 いくら叫んでも、ここには自分しかいないのだ。 どこからも返事など戻っては来ることはない。 エリオットは、直感的にそう感じていた。 涙で揺らぐ広い広い花畑を、あてもなくゆっくりと歩いた。 「あ……」 どのくらい歩いただろう… エリオットの足が不意にぴたりと停まった。 エリオットのみつめる先には、まるで鏡のようにエリオットと同じような表情をして立ち尽す少女の姿があった。 [前へ][次へ] [戻る] |