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「落ちつけよ。
今、事情を話してやるから…」

そう言いながら、俺の姿をした奴…おそらく亀田俊男は俺の手を振り払い、ベッドの縁に腰掛けた。



「良いねぇ…
これからはここが僕の家なんだな。」

両手を背中の後ろについて部屋の中を見渡しながら、亀田は微笑む。



「あんたはこれから六畳一間のアパート暮らしだ。
少し汚いけど、慣れたらなんでもないさ。」

「きさま〜!
さっきから、何、わけのわからないことを言ってやがるんだ!」

「やめろって言ってるだろ!
さっきの若い奴を呼ぶぞ!」

亀田は再び俺の手を振り払う。



「なぁ、あんた……『蜃気楼.com』って知ってるか?」

「蜃気楼.com?」

俺は混乱した頭の中で考えた…
そうだ…確か、それはこの世の者ではない者とコンタクトを取れるとされるサイトのこと…いわゆる都市伝説ってやつだ。



「それがどうしたってんだ!」

「俺はそこで良い物を手に入れた…」

俺の顔があんなに薄気味の悪い笑い方をするのを初めて見た。
それは、背筋に冷たいものを感じる程に気味の悪い微笑みだった…



「まさか……」

「わかった〜?」

亀田は俺を馬鹿にするような口調で、そう言った。



「お互い、楽しい一年を過そうね。
僕は残りの寿命全部を支払ったんだから…」

「なんだって?
どういう意味だ?」

「あんた……ルックスは良いけど頭はあんまり良くないんだね。
ま、ホストなんてほとんどがそうなんだろうけど…
よく聞けよ。
僕は、残りの寿命全部をかけて、ある取引をした。
あんたと俺の身体を入れ替えるチョコレートを受け取ったんだ。
別にチョコじゃなくても良かったんだけど、季節柄、チョコが一番都合が良いかと思ってね。」

「馬鹿なことを…
身体を入れかえるチョコなんて…そんなものがこの世にあってたまるか。」

「あんた…まだわからないの?
もう一度鏡を見る?
あんたが信じなくとも、今のあんたは誰か見たって剣さんじゃない。
どん亀なんだよ!」

亀田の瞳の中に、殺意にも似たものを感じた。
人の身体を入れかえるチョコなんてそんなものがあるはずがない…
そもそも蜃気楼.comなんてもの自体がただの都市伝説だ。
実在するはずがない。

俺の理性はそう言ったが、ならばなぜ俺の目の前に俺がいる?
なぜ、鏡に映った俺はあの薄汚い男なんだ?

俺はその答えが見出せず、ただただ混乱するばかりだった。




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