3 「あたたたた…」 マールは無意識に今打ちつけたばかりのお尻をさすった。 「あ…あれっ? ここ、どこや…?!」 『マール…だから言っただろう…?』 「え……?ここって…どこなん?」 『どこかはわからんが… また異世界に飛ばされたことは、間違いなさそうだな…』 「えーーーーっっ! またクリシェに戻ったんか?」 『そうではなさそうだな…』 「うわぁ…綺麗な虹や…」 マールは、頭上にかかる大きな虹の橋を見上げ、目を細めた。 『そんな呑気なことを言ってる場合じゃないだろう…』 「あ…あの…」 不意にかけられた声に、マールは驚き振り向いた。 「わぁ、びっくりした…!」 そこに立っていたのは、マールよりやや若いかと思われる青年だった。 「あ…あなた、一体どこから? ま、ま、まさか、伝説の虹の神様…!?」 「は…?」 「だ…だって、僕が虹に向かって愚痴をこぼしてたら、突然、あなたが天から現れて…」 「いややな、神様やなんて… 俺は…」 『そう…私は神ではないが神の使いだ。』 (こ、こらっ!ノーマン、何ゆーてんねん!) (ここは私に任せておけ!) (お、おいっ!) 「えっ!?ほ、ほ、本当に!」 マールの言語中枢を支配したノーマンはマールの代わりに青年に答える。 「嘘ではない。 神から落ちこんでいるおまえを勇気づけるように言い付かった。 詳しいことをもう一度話してみよ。」 「あぁ…信じられない! でも、あなた様が天からお出ましになる所を僕はこの目で見ました。 神のお使いってことは……わかった! あなたは天使様なのですね!!」 「私のことはどうでも良い。 それよりもおまえ自身の話をするが良い。」 「あ…はいっ!!」 男は名をショーンといい、つい最近、つきあっていた女性にふられたということを涙声で話した。 彼の心の傷はかなり深いようだ。 「なんだ、そんなことか…」 「そ、そんなこととはあんまりです! 僕は、全身全霊をこめて彼女のことを…」 「それでもうまくいかなかったのは、なぜかわかるか? それはな、彼女がおまえの運命の人ではなかったからだ。」 「え…?! そ、それでは、今後、僕は本当の運命の人に出会えるということですか?」 「あぁ、そうだとも。 ふられた彼女よりずっと美しく魅力的な女性だ。 私にここを案内しもてなしてくれたら、その運命の人にすぐにでも出会わせてやろう。」 「ほ、本当ですか! そんな素敵な女性が、僕の運命の人…夢みたいだ!」 ショーンは、今までの落ち込みようが嘘のように顔を輝かせた。 [前へ][次へ] [戻る] |