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GEASS
君の知らない物語 (ルル→スザ)
supercellの「君の知らない物語」をルル→スザで。
現代パラレル風。友情出演ジノとユフィ。






君はまだ覚えているだろうか。あの遠い夏の日の思い出を。

「なぁ、ルルーシュ起きろって」

「……何だよ。こんな夜中に」

「星!星、見に行くぞ!!」

昔から君はガサツで、乱暴で、人の話もろくに聞かないような奴だけど……そういうところが、俺はずっと昔から―――






「今夜星を見に行こう」

昼休み。いつも通り屋上で昼食を囲っていると、突然すっくと立ち上がったスザクがそう言った。

「はぁ?」

一番最初に反応したのはジノだった。

「なんでまた急に?」

「朝のニュースでお天気お姉さんが言ってたんだ。今夜は星がすごく綺麗に見えるって。だからみんなで行こうよ」

「大賛成です!みんなで行きましょう!!」

ユフィの鶴の一声で話は決定へと向かった。
柔らかく微笑み合い、今夜見えるであろう美しい星空について語り合うユフィとスザクの姿が、俺の心を締め付けた。






「行くよールルーシュ」

「……あぁ、今行く」

昔から変わらない。スザクの大声で家を飛び出すと、いつも通り玄関の前で自転車に跨ったスザクが待っていた。

「ほら早く後ろ乗って。待ち合わせに遅れちゃうよ」

「いつもギリギリなのはお前の方だろう?」

軽口を叩きながら自転車の後ろに跨り、スザクの腰に腕を回す。
変わらない俺の定位置。
こうやってスザクの腰に腕を回し、背中に顔を埋めると安心する。スザクの鼓動と俺の鼓動が溶け合って、まるで一つのものになれたかのような快感。
もう、一生このままでいたかった。

「………って、ルルーシュ聞いてた?僕の話」

「あっ、すまない。ちょっと風が強くて聞こえなかった」

「もう……ルルーシュってたまにぼけっとしてるよね」

もうすぐ待ち合わせの場所に着く。
優しい君は、そこへ着いたらここにユフィを乗せるんだろう。

「ちょっ、ルルーシュ痛い!!」

「あっ、すまない」

思わず腕に力を込めすぎた。

「ルルーシュさっきからそればっか。変なのー」

そう言ってスザクは大声出して笑った。つられて、俺も笑いたかった。でも、気を緩めたら涙の方が零れてしまいそうだった。

「あっ、着いたよ。ほら、もうジノもユフィも来ちゃってるじゃないか」

「悪かったって」

自転車を止めると共に俺はスザクの自転車から降りた。

「えっ?もう乗らないの?」

「俺はジノの自転車に乗せてもらうから。ユフィを乗せてやれ」

笑顔で出迎えてくれたユフィに笑いかけた後、俺はさっさとジノの自転車の後ろに跨った。

「でも、ホントたまには良いこと言うんだな、スザクも」

「ジノにだけは言われたくないよ。ほら、早く出発するよ」

大丈夫?とユフィに優しく声を掛けるスザク。
俺が女なら。なんて女々しいこと、何度考えたことだろう。そういう問題じゃないのに。

「俺すごい良い望遠鏡持って来たから。絶対よく見えるよ」

「まぁ、楽しみ」

「これだからお坊ちゃまは嫌だよ」

「うるさいぞースザク」

深夜の人気のない道路を、笑いながら丘に向かって走る。
みんないるのに。笑い声も体温もすぐ近くに感じられるのに。どうして俺の心は、孤独と不安で溢れているのだろう。

「ねぇ、ルルーシュまたぼけっとしてるよ」

君の優しさで、俺の心は押しつぶされそうだよ。






真っ暗な木の道を抜け、突然開かれた丘の上の小さな公園。
懐かしい匂いがした。

「いっせーのーせ、で上見上げよう」

「あっ、それいいアイディア!!」

「じゃあ、いきますよー」

「「「「いっせーのーせっ!!」」」」

見上げた夜空は星が降るようで。
上を見上げていて良かった。そうじゃなかったら、きっと涙が零れていた。

「きれー」

「うん」

きらきらした目で夜空を見上げるスザクの顔を盗み見る。
言いたい。言えない。気付かれたらお終いだ。
でも―――もう、無理だよ。

「あれがデネブ、アルタイル、ベガ」

スザクが指先の向こうの夏の大三角。昔俺が教えてやったことを、今度はスザクがユフィに教えている。

「詳しいのね、スザク。意外」

「昔ルルーシュに教えてもらったんだ。でも、意外は余計」

「ふふ、ごめんなさい」

ユフィの隣に立つ俺はスザクの一つ隣。
隣に立つことさえも出来ない俺とスザクは、織姫と彦星よりも遠い距離にいるのかもしれない。
こんなこと考えている自分大嫌いなのに。
何で織姫は見つかるのに。彦星は見つからないんだろう。
分かってる。君が見てるのは俺じゃない。
君の織姫は俺じゃなくて。俺の彦星は君じゃなくて。

「こういうの、ホントは彼女と見たいんだけどなー俺」

「残念だったね、ジノ。今、珍しくフリーだもんね」

「うるせー。万年フリーのスザクとルルーシュにだけは言われたくない」

そういう話は興味のない振りをしていた。

「べ、別に僕だって好きでフリーなわけじゃないし!!」

だって、叶わぬ相手に万年片想いだし。

「す、好きな人くらいいるし!!」

見てれば分かる。うん、分かってた。
強がってはいたけど、もう心が壊れそうだ。
人を好きになるって―――何でこんなに辛い。






ただ一言。好きって。
スザクの隣にいたいって。
その一言が言えなくて。ずっと。
胸を締め付け続ける秘めた想いは、消えないまま。






「星なんて何処にも見えないじゃないか。スザクの馬鹿」

「えーこんなはずじゃなかったのに」

「雲ばっか」

「そろそろ雲も切れると思うんだけど……」

「嘘だったら明日アイス奢りな」

「うわっ、ひどっ」

二人笑った幼き夏の日。もう戻れない夏。今でも思い出せる。

「あっ、ほら、あそこ。月が見えてきた」

「何処だよ?」

笑った顔も、怒った顔も大好きだった。

「じゃあもっとこっち寄れって」

無理やり肩を抱き寄せる乱暴な君。もうそんなことはしてくれないね。だって君の隣に俺はいないから。

「ほら、見えてきた」

「ホントだ……」

「綺麗だな」

「うん」

「また来ような」

「うん」

きらめく星、今でも思い出せるよ。
無邪気な声で夜空を指さす君は、もういないけど。
懐かしい遠い思い出の君。
大好きだった。
ううん。今でも君が大好き。






君には、決して語られない秘密の物語。






初めてフルで聞いた時、泣きそうになるぐらい良い曲でした。

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