能力(蛭魔/IC21)
ただ、働かされているのだと思っていた一ヶ月間を私はひたすら後悔した。
彼があんなにも真剣にアメリカンフットボールという球技に飲み込まれているとは知らなかったからだ。
私はデータ処理、マネージャー業務などそれにかかわるものを一カ月こなしてきた。
ずっと彼のそばにいるのに気付けなかった。
たった2人の部員しかいないというのになぜあんなに熱中しているのかが私にはわからなかった。
しかしそれに気づいたのはつい最近のことだ。
なんでこんな簡単なことに気付かなかったのだろうか、彼があんなにも奴隷を抱えている彼が私なんかを使うなんてことはとてもすごいことではないのかと。
ことの発端は一か月前。
情報の時間暇つぶしに学校の主要コンピューターにハッキングしているところをのぞかれた。
それからたくさんの紙の束とノートパソコンを手渡されて処理をまかされた。
人よりも触れてはならない線をたくさん超えているというのもありヒル魔にしたがった。
もちろんそれが知られているとは思わなかったが彼ほどの能力を持っていれば探そうとすればすぐばれるだろう。
データの処理は部室でおこなった。持ち帰るのがなにより面倒だと考えたからだ。
「おーおー早いな。」
『褒めているのかわからないけどありがとう。あ……ちょっと腕だしてその前にテーピング持ってきて。』
「あ?あぁ。ほらよ、できるのか?」
ぽいと投げられたそれをなんなく受け取りくるくると細い腕に巻きつけていく。
『しなやかだけどしっかりと質のいい筋肉がついているのね……』
やってしまったー!!
「!!……お前、マネ業務もできるのか?」
『ま、まぁ。そんな上手ではないけど。』
なんか最近墓穴を掘りまくっている気がする。
「お前、他にもできることあるだろ。隠していることも。」
『ない、よ。』
「なんでさっき渡した束が半分になってやがる。なんで一目見て俺が腕痛めたのに気付いた。」
『情報処理は探し物をしているうちにできるようになった、腕はいつもとドアの開け方が違うのに気付いたから。』
実際、ドアを開けるときいつもより乱暴ではなかった。
「いつもならここで無理やりにでもアメフト部のマネ兼主務として引き入れるところだが逃げられるのももったいねえ」
糞、と一言はき捨てて彼は思いもよらないことを口にした。
「アメフト部に入ってくれないか?俺らにとっては今年がラストチャンスだ。練習も助っ人を交えて本気でたたき込まなきゃならねえ。だからデータ処理とか俺らのサポートをしてほしいんだ。」
『……。本当に本音ですか?』
思わず敬語だ。
「もちろんだ、ケケケ俺様が人にものを頼むのなんて珍しいことだぜ?」
わかってるわよ。あたりまえじゃないの。国家権力さえシカトする男が私にお願い?
『私、熱でもあるのかしら……』
「あぁ?」
『ごめんなさい、嘘よ。手伝い、させてもらうわ。私あなたがこんなに本気でアメフトを好きだとは、真剣にやっているとは思わなかったから。』
よろしく、と最後に付け足して
私の1年の終わり
部活生活が幕を上げた。
続く?
名前変換なくてごめんなさい。
これ書きやすい感じの雰囲気だな〜。
11/5/6 ゆにゃ
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