[携帯モード] [URL送信]


煙雨の彼方


靄、いや違う。これは煙雨だった。

音といえば、彼らが草木に着地する微かな音のみで、
ゆるやかな風の流れに乗り、ゆらゆら蠢いている。
黙り込んだ樹海に薄らと月は瞳を細める。
立ち籠める煙雨に全てが朧で、全てが偽りかもしれない。
真実だと進んだその獣道は、どこへ続くのか。
選んだ分かれ道はどちらが正しかったのか。
どちらも正しくないのか。
正しいとは一体。

道すがら横切る影は本当に樹木だろうか。
振り向くと煙雨は全てを隠し、
先を見れば、煙雨はそれを拒んだ。
どこへ続くのか。
どこへたどり着くのか。

自分に問うと、囁かれるのは全て虚ろに揺れる。
悲しみも煙雨に紛れて、現在を見失った。

歩みは嘯く。
「これが正しかった」と。



後進前進
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!