詩 煙雨の彼方 靄、いや違う。これは煙雨だった。 音といえば、彼らが草木に着地する微かな音のみで、 ゆるやかな風の流れに乗り、ゆらゆら蠢いている。 黙り込んだ樹海に薄らと月は瞳を細める。 立ち籠める煙雨に全てが朧で、全てが偽りかもしれない。 真実だと進んだその獣道は、どこへ続くのか。 選んだ分かれ道はどちらが正しかったのか。 どちらも正しくないのか。 正しいとは一体。 道すがら横切る影は本当に樹木だろうか。 振り向くと煙雨は全てを隠し、 先を見れば、煙雨はそれを拒んだ。 どこへ続くのか。 どこへたどり着くのか。 自分に問うと、囁かれるのは全て虚ろに揺れる。 悲しみも煙雨に紛れて、現在を見失った。 歩みは嘯く。 「これが正しかった」と。 後進前進 [戻る] |