俺の元彼 06 「すげー!雪だー!」 高校からの帰り道、結城とならんで歩いていると、空から白いものが舞いおりた。 「…ほんとだ。初雪だな」 俺も空を見上げ、めったに見ることのないそれに目をとめた。 今日は寒いと思っていたが、まさか雪が降るまでとは。 俺は首に巻いたマフラーに顔をうずめ、身震いする。隣にいた結城がそんな俺にいち早く気付いた。 「寒い?」 「今日は一日中寒かっただろ」 だから雪が降るんだ。 可愛いげのない返事をする俺にかまわず、結城は俺の素手をとる。 「真っ赤だ。これじゃあ寒いよね」 俺たちがいるのは、家がある住宅街だ。 十八年間住んでいるそんな場所で、ご近所どうしの俺らが手をにぎりあっていたら、いらぬうわさを流されかねない。 俺は恥ずかしさも合間って、その手を振りほどこうとした。 「バカ、離せよ。だれが見てるかわかんないだろ」 「男同士だって、ふざけて手くらいにぎるでしょ。恵多、敏感になりすぎ」 あっさりと返され、俺は不機嫌に押し黙る。 結城の余裕の笑みが憎い。 前髪を左サイドに流し、ワックスでかたちを整えた結城の髪型は、涼しげな二重瞼と似合っていて文句なしにかっこいい。 それが憎さに拍車をかけていた。 すると突然、結城ははめていた手袋を手から抜きとる。 「…なにやってんの」 「恵多が寒くないように」 そう言うと結城は笑み、俺の手に自分の手袋をはめてくる。 明るい彼らしく、赤い手袋だ。 「…派手」 「我慢して」 結城は二つともはめ終わると、満足そうにそれを眺める。 俺の両手は、彼がしていたぬくい手袋に温められていく。 「これで寒くないっしょ」 「…手袋が欲しいなんて言ってない」 「いーの。恵多が寒がってんのは俺がいやなの」 [*前へ][次へ#] [戻る] |