俺の元彼
05
小熊が氷をならし、グラスの中身を飲む。
「クラスの女子がはしゃいでたよ。経済学部は深谷と本多のおかげで、目の保養だって」
「はは…、まさか」
「本当だって」
小熊は笑い、グラスをかかげる。
「俺も、深谷と同じクラスでうれしいよ」
「小熊…」
「これから四年間、よろしくな」
貸しきった薄暗い店内で、小熊があいさつの笑みを浮かべる。
そのとき、例のテーブルから女たちの楽しそうな笑い声がした。
(また…イチャついてんのかよ)
俺はくっと唇を噛む。
今すぐにでも店内をあとにしたい衝動に駆られながら、俺は小熊へ笑みを返す。
「俺も…うれしいよ」
そしてグラスの中身を一気に飲みほした。
回るアルコールに頭がくらりとする。
(やばい…か…?)
だが、知ったことじゃなかった。
飲みなれないアルコールに飲まれようとも、ここで醜態をさらそうとも、なにもかもがどうでもいい。
(――結城…)
俺はすすめられるがままにお酒を注文する。
何杯飲んだかなど、覚えちゃいなかった。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!