俺の元彼
04
(俺だけだと言いながら、俺だけじゃなかった。ずっと浮気されてたんだよ…)
もしかしたら、俺のほうがセカンドだったのかもしれない。
異性と付き合うのが法に則った世の中、なにを好き好んで男と付き合うだろうか。
月曜日になり結城を置いてさきに登校すると、俺の教室まで結城が来た。
「これ、忘れてっただろ」
そう言って時計を差しだされたが、俺は受け取らなかった。
知らない女とセックスした部屋に置いてあったものなど、触れたくもない。
「それ、捨てて」
「は…?」
そして問答無用で別れを切り出した。
顔も見たくなかった。
いつも一緒にいた俺たちが疎遠になったことで、ほかの友人たちは驚いていたが、不思議がられはしなかった。
高校生の男で家まで近い幼馴染みと、四六時中一緒にいたくはないよな、と苦笑された。
はっとした思いだった。
(だから俺は…浮気されたんだ)
ある程度成長した男にとって、昔からよく知っている相手と過ごすだけでは退屈だったのだ。
だから女とも付き合った。
そういうことだ。
それからは顔を合わせないようにし、連絡も取らなかった。
そして春、大学の入学式のときは驚いた。
結城が同じ大学にいたのだ。
しかも同じ学部。
結城と別れてから俺は志望校を変更したのだが、同じことをしたらしい結城と運悪く学校がかぶってしまったのだ。
高校と違って大学は数が少ない。ありえないはなしじゃなかった。
(そりゃ会いたくない相手と学部まで同じじゃ、女とイチャつきたくなるよな)
俺は皮肉にも似た思いで自嘲する。
結城だってたとえ本気じゃなかったとしても、自分を振った相手と顔を合わせたくはないだろう。
せめて気まずくならないようにと、入学してから一度も結城と話してはいないし、近付いてもいない。
同じ学部の人間にも、結城と幼馴染みであることは言っていなかった。
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