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「この空の下で」 激突と不安 「ねぇアニ、煙草が吸いたいよぅ」 横になってテレビを見ていたら、ヒデがすりよって来た。 ヒデは多分全くもってノーマルなタイプだと思うけど、寝る時には抱き着いてきたりするし軽くキスしても怒らない。 子供の頃の親との関係が不安定すぎて、最低限必要な何かが欠如しているように思える。情緒的にも、行動的にも。 煙草ねぇ．． 給料日前、かなり財布の中は苦しい。 筒状の灰皿をひっくり返して、吸い殻を全て分解する。 「．．何してんの？」 まぁ、待ってな。 作詞に使っているノートを破く。 吸い殻から採取した煙草の葉とキレイめなフィルターをノートで巻く。 「．．．．．」 ほら、できた！ 「う．．う〜ん．．」 みんな煙草の銘柄が違うために、オリジナルブレンドの煙草の完成だ。 どう？ 「変な味．．でもまぁないよりいいねぇ．．」 同じ要領でもう一つ作って吸ってみた。 ははは。変な味！ チャーリーは新宿に職を探しに行っている。ヒデは昨日歌舞伎町のマックに面接に行ったけど採用はされなかったようだ。 「東京にいけば．．」 ん？ 「東京に行けば、何かあるとか、何かが変わると思ってたんだよう」 ．．． 「どうしよう、アニ、俺、何にも見つけられない．．なんも変われないよ．．どうしたらいいかわかんねぇ．．」 ヒデの意見には共感できる。 自分だって、そんなふうに考えこんで不安になったりする。 目的があるかないかの差はあるかもしれないけど、音楽でやっていきたいなんて目的は、曖昧で、どうしていいのか解らない不安は今のヒデと大差ないのかもしれない。 どんな言葉をかければいいんだろう。もし、今の自分が、誰に何て言われたら、救われるんだろう。 「群馬にいても退屈でさ、毎日、同じなんだよ．．仕事疲れて、仲間と酒飲んで、遊ぶっていったらカラオケか風俗かパチンコしかないし、どれも飽きちゃってるし、なんかしたいけど、何すればいいかわかんない．．アニは、音楽があって、いいなぁ．．」 どうかな．． 「．．．？」 あんま、変わんねぇと思うよ．．俺だって．． 携帯が鳴る、カツマからだ。 もしもし？ 「サトシ．．．ヤスシが．．．．．」 ．．え？ ――前日 厚木 深夜―― ポタ ポタ ．．．．うぅ．． 痛ってぇ．． ポタ なんの音だよ．． てか、何が起きたんだ ポタ あぁ、そうか、 猫が、猫がいて、 ポタッ 足、が変だな．． 動かねぇ．． ポタッ 額から頬に何かが流れる度に、 ポタッ う〜．．．手は、動くみたいだな．．イテテ．． ポタッ あぁ、血、かぁ．． ポタッ ポタッ はは．．ははは．． 死ぬんかな俺．． 嫌だなぁ．． まだ、何もしてねぇのに まさかだろ．． 死ぬわけねぇよ まだ、セックスもしてねえのに 死ねねぇだろ こんな事なら．． こんな事なら．． もう少し頑張ればよかった 勉強とか、バイトとか．． ドラム．． バンド．． あぁ．．眠いな．． こんなだし、怒られない、よな．．寝てたって．．いや、目ぇつむるだけさ．．イテテ．． ポタッ ポタッ．．． ［前へ］［次へ］  |