男は三十路から!
突然の訪問者
午前七時。
俺はいつもの目覚まし時計のアラーム音で起きた。
「…チッ」
目覚めてから気付く。
今日は休みなんだから、昨日目覚まし解除しとけば良かった。俺は目覚まし時計を一睨みしてから、再びベッドに倒れこむ。
そして、素早くもう一度起き上がった。
――今日は、俺だけがこの家にいるのではないのだ。
俺は飛び起きて、すぐさまリビングに向かう。そうすれば、ソファーに丸くなった塊を見つける。
「…いた」
別に家から出ていってるんじゃないかとか、そんな考えはないけど。その不恰好な姿を見ているだけで、胸に温かい感情が流れ込んでくる。
「…おはよう、瀬名」
そう俺の元甥っ子に呟いて。
【一匹狼な男】
「…瀬名?」
ソファーに近づいてみれば、ゆっくり上下にその塊が呼吸していることが分かる。足はソファーからかなりはみ出ていて、かなり間抜けな格好だ。毛布を頭まで被って寝ているから、顔は見えないけれど。
「…きっと可愛い顔して寝てんだろうなぁ」
寝顔はどんなに怖い顔の人でも無防備な顔だと言うし。今は眉間に皺ばかり寄せてるが、昔の瀬名はそりゃもう可愛かった。なんて言ったら、怒るだろうけど。
こんな慣れない環境で朝早く起こすのも忍びないので、俺はソファーの下に落ちて丸まった毛布をお腹部分に掛けてその場を立ち去る。
どうせなら瀬名が起きた頃には朝飯が出来てるなんてどうだろう。と、俺は完璧なスケジュールを立ててキッチン向かった。
そして朝飯のほとんどを作り終わり、味噌汁の味見をしていたとき。朝早いというのに、軽快なチャイム音が鳴り響いた。
「…はい?」
こんな朝っぱらから誰だよ、と思いながら玄関のインターホンを覗き込む。そこには朝日でキラキラと光る金髪の、一人の少年の姿が映っていた。
「…どちら様ですか?」
「瀬名の親友の鷹野 弘毅(タカノ コウキ)でーす。開けて下さいな!」
インターホン越しでも分かる、にこにことした表情。それを聞いた俺は玄関の扉を開ける。
「…やぁやぁ、朝早くから瀬名に会いに来てくれるなんて。はじめまして、柏木と言います。いつも瀬名が世話になってるね」
そして、人好きのする笑みの“いい叔父さん”モードで彼を出迎える。
それがすぐに後悔する結果になるなんて、俺は夢にも思わなかった。
「…わぁ、さすが瀬名の叔父さんだけあってイイ男ッ!えっちなことしたら、どんな声で啼くのかなっ」
「………は?」
思わず彼、鷹野の言う言葉が分からず俺は固まってしまった。
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