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透、契約する! 8
「透と俺の目的は同じだ。十蔵さんに足を洗わせる。会社を真っ当なものにする。妨害してくるヤツラはぶっ潰す。だから手を組んだ」

 紫煙を吐きながら丈は言う。

「……嫁ってのはなんだよ」

「そろそろ落ち着けって上がうるせぇんだよ。形だけ籍入れるにしても、女ってな感情で生きる生き物だ。いつ裏切るかわかったモンじゃねーし、透を養子にする時に絶対面倒が起こる。それなら、最初からこいつを嫁ってことで認めさせる」

「その思考回路がわかんねぇ……」

「いいや、テメェならわかる」

 丈は煙を江本さんの顔に吹きつける。

「俺は十蔵さんに救われた。だからあの人のためなら命を投げ出せる。あの人の幸せに繋がるならば何でもする。テメェも同じだろうが」

 江本さんが悔しそうに俯いた。

 それを慰めるように、俺は口を開いた。

「あのね、江本さん。全部契約上の話だから。丈は命張ってくれるんだ。だから、俺は丈の籍に入って背中を守る。それが最短距離だと思ったんだ」

「だけど若……」

「俺の性格、知ってるだろ。……使えるものは何でも使う。俺の存在に価値があるなら、それを担保にしてでも俺は目的を達成する」

「……若」

 揺らがない俺の決意に、江本さんはガクリと膝をつく。

 その江本さんの両肩に手を置いて、俺は顔を覗き込んだ。

「俺と親父、どっちにつく? 親父にだったら、今の話は聞かなかったことにしてくれ。親父のためになる話だ」

 江本さんは、ごくり、と息を飲んで答えた。

「俺、の命は若のために」

「それならば俺を守れ。その命、貰い受ける。その時が来たら一緒に来い」

「……はい」

 江本さんが頷いたのを見て、丈が「痺れるねぇ」と笑った。そんな丈を江本さんは睨みつける。

「テメェの指図は受けねぇからな」

「構わねぇよ。江本が俺を守るって誓おうもんなら裏がありそうで月夜の晩でも眠れねぇわ」

 そう言う丈は、煙草を捨てて踏み消した。

 俺はそれを拾って、丈の手に戻した。丈は渋々、車の灰皿に捨てた。

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あきゅろす。
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