透、契約する! 5
丈はこんな風貌だし、有能な男なので、とにかくモテる。
本人の意向など関係なしに女関係のトラブルも多く、上層部からさっさと身を固めろと言われているらしいけれど、丈は本気で女が苦手だ。
「透だって女顔だからな、本来はNGだぜ。いつになったら背伸びんだよ、マジで」
「俺に言うな。俺だって伸びたいよ!」
「透は京さん顔だからまだギリ耐えられるけどよぉ」
京ってのは、母さんの名前だ。
「それだって、十蔵さんの血が混じってるから何とか我慢……って、まさか不義の子ってこたねーだろな?!」
いきなり俺の胸ぐらを掴み上げる丈。
「ア? 何だ、そりゃ。俺の母親に対する侮辱か?」
睨みつけて怒鳴ると、丈は手を放した。
「……今の言い方、ちょっと十蔵さんっぽかった」
照れる丈がキモイ。
「まぁ、あのラブラブ夫婦が浮気とかあり得ないから安心しろよ」
俺がそう言うと、丈は気分を落ち着かせるように煙草を深く吸った。
「ふー……。それはそれで、あの体格差でどうイタシタんだろうか、とか色々思うところはあるけどな」
「ッ?! 生々しい想像はよせッ!!」
息子としては、出来る限り思い描きたくない映像だからよ!!
丈は煙草を灰皿に押しつけると、無言で俺にキスを迫ってきた。思わず殴る。
「……お前なぁ、いつになったら慣れんのよ。いつまでたってもお披露目できねーだろうが」
「ヤニ臭い」
「ワガママな嫁だな」
丈が俺の腕を押さえつけて再び顔を近づけてくる。
身体を強ばらせた瞬間。車の窓ガラスが、バンっと叩かれた。
窓の外を見て、ギョッとした。
「え、江本さん?!」
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