透、遭遇する! 15
「え、あ……お、怒ってない、全然……」
ぶんぶん首を横に振る早川をジーッと見ていた馨が、俺に耳打ちしてくる。
「コレが、アレなの?」
早川が筋金入りの不良で、いきなり俺の友達に因縁をつけてきた話を知っている馨は、ちょっと拍子抜けをしたようだ。
「双子の兄貴でもいなければな」
俺がそう言うと、馨はブハッと吹いた。
「早川さん。先日のお礼として、私にチケット代を奢らせてください」
那由の申し出に、早川は「そんなことをしてもらうわけには」と焦る。
「早川、こうなると那由は結構ガンコだから、ありがたく奢ってもらえよ」
俺が助け船を出すと、早川は観念したように黙り、那由は満面の笑みを浮かべる。その笑顔を見て、ますます早川は赤くなった。
「みんな、ココで待ってて下さい。私、まとめて買ってきますから!」
そう言うと、那由はチケット売り場へとパタパタと走っていく。
その後ろ姿を見て、早川は脱力するように「はぁぁ……」と深くため息をついた。その瞬間。
「ねえ、早川さん。那由のどこが好きなの。顔?」
「ぶっ! がはっ、ごほっ!」
馨のぶしつけな問いに早川はむせた。
「な、何……」
「透にもちょっかいかけてたんでしょ。どっちでもいいってこと?」
畳みかけるように問いつめる馨。目がさまよう早川。
「だって、那由と透はそもそも性別が違うし、性格だって全然違うんだよ。普通、別人だって気がつくでしょ?」
「うう……」
早川が呻く。
そりゃな、まるで気が付かなかったのだから。俺も少し居心地が悪い。
「馨。早川が誤解したのは俺のせいだから、あまり責めないでくれよ」
「透は黙ってて。で、どうなの?」
キッと睨まれて、俺は口をつぐんだ。
すまん、早川。馨には勝てる気がしない。
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