透、遭遇する! 12
「基本的に学業を優先するつもりなので、それはたとえ友達の沢木が頼んできても無理です。ごめんなさい」
俺は深々と頭を下げた。
「別に名前だけでもいいんだけど……無理かな?」
「……マサ」
なおも食い下がろうとする副会長を制する声がかけられた。
昼寝をしていたはずの生徒会長が、顔に乗せていた雑誌をずらして、副会長を睨んでいた。
「グダグダうるせぇ」
……迫力があって、それでいて落ち着いた声。
「嫌がってるヤツを巻き込んでどうする。俺らにそんな権利はねぇ。例えチームのためだろうと、人の生き様を他人が決めんな」
「えー。でも、彼はお買い得な優良物件だよ? 僕のパンチ全部かわしたんだよ。うっかりどこかのチームに渡る前に押さえておかないと物騒だよ」
人を賃貸不動産みたいに言うな。
つか、アンタはチームへの勧誘活動の一環で、笑顔を浮かべながら殴りかかるのか。アンタの方がよっぽど物騒だ。
「……それに、足達君がこれからも《シエル》から喧嘩を売られるって可能性もあるでしょ。守りやすい体制を整えるという意味合いもあるけど……」
副会長の言葉は俺が遮った。
「お気持ちはありがたいですが、火の粉は自分で払います」
「え?」
「トラブルを他人任せにするつもりはないし。もちろん、みなさんと敵対するつもりもありません」
俺がそう言うと、生徒会室に静寂が訪れた。
「……ぷっ……ははっ」
沈黙を破ったのは、会長の笑い声だった。
沢木が目を丸くした。
「俺、須藤サンが笑ってるの、初めて見た……」
副会長も珍しい物を見る目をしている。会長はまだククッと喉で笑っていた。
「悪いな。お前を馬鹿にしたわけじゃない。お前はお前のやりたいようにやれ。ただ、助力は惜しまない。同じ学校の生徒として、だ」
「……わかりました。それならばありがたくお受けします」
そう言って笑顔を浮かべると、既にしかめっ面に戻った会長が扇のように大きな手で、俺の頭をワシャワシャと撫でた。
こんな風に、2日立て続けで、《シエル》と《カブキ》双方のトップと対面してしまった俺だった。
頭が痛い。
[*prev][next#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!