透、遭遇する! 2
「私だったらそんな男、ぶん殴っても気にならないだろうな。むしろ、爽快?」
「お前なぁ……。“和の武道”合気道場の跡取りだろ」
「へいへい、どうせ私はまだ未熟者ですよ。ま、那由を助けたってことだけは、そのヤンキー褒めてやっていいけどさ」
那由を猫可愛がりしている馨は、腕組みをしてウンウンとうなずいた。
「透も、そいつにちょっと恩義を感じてるから後悔してるんでしょ。そういうところ、透は律儀だし。何だかんだで優しいよね」
馨がさらっとそんなことを言うので、俺はちょっと困った。
「優しかったら殴ったりしないだろ」
「私は横暴を我慢することが優しさだとは思わないよ?」
「……そっか」
「もし那由にチョッカイかけてたら、私が息の根を止めに行くし」
「笑えないよ?」
小学校時代、那由に意地悪して馨にボコられた男子は数しれない。
「でも、ありがとな、馨」
礼を言って笑顔を向けると、馨がほっとした顔で笑った。
「……ようやく笑ったね、透」
「おかげさまで」
持つべきものは友達、だな。
道場からの帰り道、携帯電話を確認すると、沢木からメールと着信が数回あったようだ。
不審に思いつつメールを開く。
『トールちゃん、家にいる?』
『返事ないからもう1回メールしてみた。無事?』
『今、どこ? メール見たら返事くれ』
……なんだ、コレ。何かあったのか?
沢木に折り返し電話をするため、商店街の騒音から逃れて裏路地に入る。
すると、曲がり角の奥から何かぶつかり合うような音が聞こえてきた。
[*prev][next#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!