闇夜の国 2
母さんは、最近よくめかし込んで外出する。そんな日は、そのまま次の日の昼頃まで戻らないことがほとんどだ。
父さんも父さんで、母さんがいなくても特に不自由は無いみたいだ。出張と称して家を空けることも多い。
いてもいなくても同じ僕。
要するに、僕の両親の仲は冷え切っているのだった。
よく母さんは、
「あんたのせいで――」
と、恨めしそうに僕を見た。僕がいなければ、さっさと離婚でもして、新しい恋に生きるのだろう。
母さんは、欲目で見なくとも大した美人だと思う。
ただ、そんなことを呟いて僕を睨むときは、どうにも惨めに見えた。
父さんは有名どころの商社に勤めていて、有能で男らしく、今でもよくもてるようだ。若い頃から浮気ばかりしていた、と母さんは愚痴を言っていた。
その父さんが母さんを選んだのは、最も見栄えが良いから、という理由だったそうだし、母さんが父さんに近寄ったのも似たような理由だろう。
父さんは元々子供に興味のない人らしく、僕が産まれてから、あまり家に戻らなくなった、と母さんは言った。
僕は母さんの酷い言葉でよく傷ついた。そして、少しずつ笑えなくなった。
母さんは、どんどん無口になる僕が余計に癇に障るらしくて、今では母さんと視線を合わせるのも珍しい。
もしかしたら、僕が泣いてすがって頼めばさ、どうにかなったのかもしれない。
でも、それって本当にどうにかなってるのかな。
それとも、どうかしちゃったのかな。
闇に……溶けてしまいそうだ。
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