『同趣味』SS・初雪編
今回は趣向を変えて、『同じ趣味、違うアイツ』の番外編をお送りします。
***
「……初雪」
小さな声で名前を呼ばれて、俺は振り返った。
だけど、後ろの席の太田は窓の方を向いていた。
外を見ると、雪がちらほらと舞っている。
「……何?」
太田が俺の視線に気がついた。
こいつはいつも姉貴のお下がりを着てるらしく、今日も花柄シャツにピンク色のカーディガンだった。
ランドセルも赤いし、クラスの中で一番細いのもあって女子にしか見えない。
「……何でもない。呼ばれたと勘違いした」
そう言うと、太田は首をかしげた。
「俺の名前、飛鳥初雪だもん」
「初雪って、この雪の初雪?」
「そーだよ」
「へぇ。初雪が降った日に生まれたの?」
「うん。誕生日、明後日」
俺の言葉を聞いた太田は、筆入れを開けて何かを取り出した。
「ちょっと早いけど、誕生日おめでと」
そう言って俺にくれたのは、俺が好きなゲームのステッカーだった。
すごく格好よくて、キラ加工されている。
「これガチャガチャの当たりじゃん。いいの?」
いつもは表情に乏しい太田が、一瞬ふわっと笑って頷いた。
笑うとすごく可愛くて、俺は少しドキッとした。
俺は、家に帰ってからもしばらくステッカーを眺めていた。
虹色の光は、見ていて飽きない。
悩んだ末にそのステッカーは学習机の引き出しに貼った。
太田は凄く引っ込み思案で友達がいない。女子に弄られてるのはたまに見るけれど……。
あいつもゲーム好きなのかな。
一人ぼっちは可哀想だし、たまーになら遊んでやってもいいかな。
俺はステッカーを指でなぞりながらそう思った。
***
小学生の頃、まだブラックになる前の飛鳥君とタカちゃんのお話でした。
この頃のタカちゃんはとても愛らしいのですが、背が伸びるにつれて全体的に間延びして普通になりました。残念。
(2011.8.17拍手)
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