『発展途上』早川失言編1 今回は『発展途上少年』2章と3章の間にあったお話です。発展小話は初めてですね。 早川視点であるのと、無くても話は通じそうだったのとで、本編からカットしてしまいました。(酷い) 早川が哀れすぎるかなと、番外編としてリサイクルしたものの、本当にそれが良かったのかどうか、微妙な内容ですよ。 早川、失言する!←没になった章題。 *** 「いつっ、……てて」 ふとした弾みに、腹に痛みが走った。 今日、トールにぶっ飛ばされたところだ。そう思い返して……沈んだ。 ほとんど無意識だった。 気がつけばトールを抱きしめていた。 こわばる身体。俺の腕の中に簡単に収まるほど小さくて。いい匂いがして……。 次の瞬間、足先に激痛が走った。 ひるんだ瞬間、みぞおちに正拳がめり込む。 思わず腕を放して腹を抱え込むと、追い打ちをかけるように蹴り飛ばされた。空手でも習っているのか、思わず見惚れるほど綺麗な蹴りだった。 気がつくと、金髪の男が俺の顔をのぞき込んでいた。 立てるか、と聞いてくる男の言葉は無視し、ふらつきながらも俺は《シエル》のたまり場である喫茶店、スカイブルーへとやってきたのだった。 ……トールと初めて会った時。 目がくらむほどの美少女だと思った。バラ色の微笑み。優しい声。儚げなたたずまい。 俺みたいな不良が声をかけたら、汚れてしまうのではないかと不安になるほど、清楚な雰囲気を持つ子だった。 でも、俺は……見た目なんか信じない。外見で判断されて嫌な思いをした人間をいっぱい知ってるからだ。 それなのに、俺はほとんど意識する間もなく、不良に絡まれていた女の子たちを助けていた。 一緒にいた女の子を庇うようにして立っていたあの子。 不良どもを追い散らした俺に礼を言うと、怪我がないかと尋ねてきた。 俺だって不良なのに。 そんなことは全く気にもしない風で。 何だか眩しくて、俺との間には見えない壁があるように感じた。 ああ、これが「住む世界が違う」ってやつだ。 名前も尋ねられたけれど、息が苦しくなってそのままその場を後にした。 [*prev][next#] [戻る] |