『同趣味』SS・西野コンビ高一編1 『同じ趣味、違うアイツ』から久野君SS第4弾。4章とリンクする高一編です。 *** 「チッ、しくったな。《シエル》のヤツラがいんのか」 東南高に無事合格したものの、幼なじみのシンちゃんはそう呟いた。 高校生になってもシンちゃんは相変わらず金髪で、相変わらずちっちゃい。おっと、ちっちゃいは禁句だった。もちろん、シンちゃんは世界一格好いいけどね。 《シエル》ってのは中学生ながら馬鹿強いと知れ渡っていた不良グループで。 何度か《シエル》の下っ端に絡まれたことはあるけれど、シンちゃんはタイマンに美学を感じる男だから、多人数で来るようなヤツからはのらりくらりと逃げていた。 いや、逃げるって意識じゃないな。一人で来ないようなヤツは相手にしてない。もちろん、相手が一人なら受けて立ってたけれど。 《シエル》のリーダー的存在「義家」という男は、どこそこの誰が強いという噂を聞くと、そいつを捕まえて何発で沈むかを仲間内で賭けの対象にしていた。 ……その《シエル》の義家や早川が、東南に入学していた。 「いいか、キューちゃん。ストッパーの早川はともかく、義家とは目を合わすなよ。芹沢とは違う意味で狂ってるから。アイツは人を壊すのが趣味だ。俺も正直、関わり合いたくねーや。しかも、アイツら仲間多いからメンドイ」 「だねー。ま、逃げ足鍛えておくよ」 「そうしとけ」 まぁ、それでも入学したばかりの頃の俺たちは、わりと呑気にしてた。 そのうち、義家が東南の中で名の知れた先輩を一人ずつ潰していった。 気が付けば《シエル》が、東南のトップに立っていた。 その後も週末になると犠牲者が出た。 義家は既に校内の人間には飽きたようだったが、今度は制圧されて《シエル》の下についたヤツラが、義家を真似て週末になると賭けリンチをやっているともっぱらの噂だった。 当然、そんなことが続けば警戒するヤツラも出てくる。しかし、今度は先にお目当てが親しい人間を人質に取って呼び出すのだという。 その頃からシンちゃんはピリピリしはじめた。 [*prev][next#] [戻る] |