『同趣味』SS・アイツの隣編1 『同じ趣味、違うアイツ』9章から、芹沢君目線の裏話SSです。 *** 清と仲良くしているアイツが、あの日、ゲーセンの便所で清を踏みつけにしていたヤツだったと知ったのは、地元に戻ってから随分経ってからだった。 何となく茶髪でヘアバンドをしていたヤツがいた記憶はあるけれど、次の瞬間にはぶん殴って沈めていたからほとんど声も聞いてないし、そいつが髪の色を変えていたら俺に思い出せるわけがなかった。 だけど、飛鳥が染め直してきた髪を見た瞬間に、頭の奥に眠っていたあの日の記憶が、ゲームセンターの風景と共にチカチカとフラッシュバックした。 つまり、清をかっさらってあんな目に遭わせた張本人。 それに気が付いた瞬間、俺は腹の中が煮えくりかえった。 ――だけど。 清の部屋で一緒にゲームをしたり、同じ店でバイトしたり、清の母親から料理を教わって美味い飯を食わせてくれたりしてたのもコイツ。 仕事は真面目で、バイトの後輩の面倒見もいい。ポロッと口にするギャグとかも結構面白くて、ゲームの趣味も似ているし、一緒にいて居心地の良さは感じていた。 「何を百面相しているんだ、芹沢は」 「ああ、飛鳥君が俺を虐めていた張本人だと気がついたな、これは」 「ええええ、今?」 「……うっせぇ。何でお前、清の傍にいんだよ!!」 思わずそんな言葉が口から出た。すかさず清に後ろから蹴られた。 「キミな、ものすごーく今さらだ」 「だ、だってよ、コイツがよぉ……」 清の言うことはもっともなのに、俺は何だかすごく仲間はずれにされた気持ちになって、胸が苦しくなった。 あんなに酷い目に遭っても、飛鳥と友達になりたかったんだよな、清は。 「……本当に二人には悪かったと思っている」 そう言うと、飛鳥は深く頭を下げた。 そのまま清の部屋の床に気が抜けたように腰を下ろし、ため息をついてうなだれた。その表情には、本当に後悔の色があった。 [*prev][next#] [戻る] |