違う過去 8
俺が目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。
付き添ってくれていた母が安堵して泣いた。
検査の結果、骨などに異常はないようで、傷の処置を終わらせると家に戻れることになった。
「パパが車で迎えに来てくれるって」
「仕事は大丈夫なのか?」
「もー、何言ってるのぉ。タカちゃんの方が大切でしょ」
俺は廊下の方をチラッと見た。
「もしかして、カイ君のことが気になってる?」
「ああ。風紀顧問の前で思いっきり相手ぶん殴っていたからな……」
「反省文を書かせるのに、唐草先生がカイ君連れて一度学校に戻ったみたい」
「俺を助けたせいで反省文……か」
「相手の一人、歯が三本折れたんだって」
「おおっと」
「相手は五人だったんですってね。カイ君って本当に強いのねぇ」
ようやくいつもの調子が戻ってきた母がにっこりと笑った。
そのうち、父より先に唐草先生と担任に連れられて芹沢と小山内が顔を出した。
「太田、もう起きて大丈夫なのか?」
ベッドのふちに腰掛けていた俺を見て、担任が慌てたように言った。
「はい。脳震盪を起こしてただけで、後は大したことはありませんでした」
俺の言葉を聞いて、小山内が「良かった〜!」と胸を撫で下ろした。
「小山内君が助けを呼んでくれたんだな。ありがとう」
「僕にはそれくらいしか出来なくて……。逃げてゴメン……」
「何を言っている。あの時はそれが最善の策だっただろう? キミまで巻き込まれたら、俺はきっと自分が許せなかった。だから気にするな」
俺がそう言うと、小山内は「慰められちゃった」と涙声で笑った。
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