同じ道、同じ言葉 37 予定日よりも3週間も早かったものの、元気な女の子が生まれた。 陣痛からたった二時間、超安産だったようだ。 姉貴が魂の抜けきったような顔で、義兄に支えられながら子供の頭を撫でている。 初孫誕生に感動して一番号泣しているのは父だった。 女の子だから、家族総出で草野球の夢は遠そうだがな。 安心したら、俺の腹がグウと鳴った。 「お前、酔っぱらっててあんまり飯食ってねぇもんな……」 皆慈が俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。 「パパとママ、もうちょっとこっちいるけど、もう遅いからタカちゃんたちは先に帰ってなさいな」 「わかった。ちょっと軽く食べて帰る。皆慈の叔父さんにもメールしておくから」 「明日、改めて連絡入れるわね。お金も立て替えてもらってるし」 母から夜食代を貰って、病院を出た。 いつの間にか、チラホラと雪が舞っていた。 「初雪だ」 「寒いと思ったら。清、ミニスカートでよく平気だったな」 「本気で死ぬかと思った」 俺はマフラーをきつく巻き直した。 皆慈に適当なレストランに寄って貰い、俺はサラダバーで空腹を満たした。 「……それにしても、清の姉貴が母親とはなぁ……」 コーヒーを飲みながら、皆慈がしみじみと言った。 「子供は親を選ばないからな。変態にも平等に親になる権利はある」 「清、何げにひでぇ」 「尊敬はしている。何ヶ月も命をお腹の中で守り続けた末に、命がけで産むのだからな。女の人ってすごいな。すごい愛情だと思わずにはいられない」 「……だな」 ふー、と皆慈が深いため息をつく。 「そういえば……俺の母親、俺の誕生日を覚えてたな……」 「忘れられないものだろう」 「ちょっとは愛されてたのかな、俺も」 「俺はそう思う」 そう答えると、皆慈は少し目を細めて笑った。 [*prev][next#] [戻る] |