違うアイツ 14 次々と所員たちが刑事にしょっ引かれて行く中、アイツはポケットからハンカチを取り出し、身体を起こした俺の側にしゃがみ込んで、額の血を拭った。 俺はアイツの顔を見ながら、かなりのアホヅラをさらしていたに違いない。 「……お前……本当の本当に清なのか……」 「くどい」 「な、何でここにいんの?」 「修学旅行」 「は?」 「先々週、西山君たちが修学旅行でキミを見かけたと教えてくれてな」 「…………」 「ああ、西山君はガッカリしていたぞ。キミ、彼らの顔をすっかり忘れただろう。その割に、よく俺のことを覚えていたものだと感心する」 「……忘れねぇ、って言った」 俺がそう言うと、アイツは「そうだったな」と呟き、くくっと笑った。 「傷はさほど深くはないが頭だから心配だ。大事をとって病院で見てもらうべきだな」 アイツらしい言葉に、俺は胸がキューッと痛くなった。 「頭の傷、お前の方こそ大丈夫なのかよ」 「ああ、大丈夫でなければここにはいないであろう。……っていうかキミな」 アイツは深くため息をついて、俺の頭を撫でた。 「せめて俺が目を覚ますまで傍にいたまえ。友達甲斐がない」 アイツの目が赤く染まっていた。今にも泣きそうな顔だった。 「……お前が死んだら、どうしようって」 「勝手に殺さないで頂きたい」 「っ、だよ……な……」 俺はアイツの顔にそっと触れた。 必死に覚えたところに、ほくろがちゃんとあった。 本物だ。 ズキッと傷が痛む。だから夢じゃない。 俺は自分の弱さから逃げたのに、清は俺をずっと探してくれてた。 「一日たりともキミを思わなかった日などない。無事で良かった」 先に泣いていたのは俺だった。 [*prev][next#] [戻る] |