違う印象 11
「早川さん、あの白い髪、ハチコーの芹沢ッスよ。三中の狂犬って呼ばれてた……」
「アア? ハチコーってコトは《カブキ》の一員か?」
「そんな話は聞かないッスけど……」
俺の腕を背後で押さえつけたまま、赤男改め、早川は唸った。
芹沢……。やっぱお前、そこそこ有名人のようだな。
「こいつ、捕まえてろ」
早川は横にいた男に俺を渡すと、ドアを思いっきり蹴って大きな音を立てた。
中にいた男達はこちらに振り向いた途端、怯えの混じった顔を見せた。
「は、早川……ッ」
ざわめきが起こり、急速に乱闘騒ぎが収まる。
芹沢も拘束されている俺に気がついてギョッとした顔になった。
「おいコラ、林。テメェ、《シエル》の名前で好き勝手してくれてるそうだな」
林、と呼ばれたゴツイ男は一瞬ひるんだが、不遜に笑い返した。
「ボスに好きにしろ、と言われたから好きにしているだけだ」
「あーそうかよ。そのボスからの命令を伝えるぜ。『うぜぇから潰して来い』」
その言葉を聞いた途端、林は手にしていた鉄パイプで早川に襲いかかる。早川はそれをかわし、腕をねじり上げた。
「ほんとに、う・ぜ・え!」
そのままみぞおちに強烈な膝蹴りを叩き込むと、林は激しく嘔吐して倒れた。
芹沢に襲いかかっていたヤツらも、目標を早川に変える。
その隙に、カウンターから西山がヒョコッと頭を出し、茶髪の男を背負って裏口へと移動した。おそらくアレが久野という人なのだろう。逃げる二人に気が付いた男は、芹沢にのされていた。
西山たちが裏口から出るのを見届けた芹沢は、振り向きざま早川に襲いかかった。
「うおっ?!」
芹沢の蹴りをぎりぎりでかわした早川は、眉を顰めた。
「今回は見逃してやっから、さっさと出ていけ、芹沢」
「俺のツレをどうするつもりだ、てめぇ」
威嚇するように、芹沢はフーッと大きく息を吐いた。
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