同じ夢 9
芹沢は手元のプリントを見返しながらため息をついた。
「正直、数学と英語ができねぇのはヤベェ、って自分でも思ってんだ」
「そうか? 算数はともかく、数学と英語は避けようと思えば、いくらでも避けられる気がするが」
「……笑うなよ。俺、ゲーム業界に就職してーんだよ」
芹沢は口をとがらせてそっぽを向いた。照れている。
「なんだ。俺もゲームを作るのが夢だ。一緒だな」
そう言うと、芹沢は驚いたように俺を見た。
「……やっぱゲームには必要なんだろ、数学」
「ま、大手では入社試験に数学の問題が出るらしいな」
「うわー、やっぱりかー。プログラムにも英語がいるしよー」
「言っておくが、C言語は英単語が使われていても英語ではないぞ」
「エッ……」
「中小ゲーム会社だと、学歴より即戦力を重視するらしいし、一口にゲーム会社と言っても色々と仕事はある。まだ高校生活は始まったばかりだ。自分に向いている分野を見つけていけば良いのではないか」
「そっか……。そうだよな」
芹沢はウンウンと頷いていた。
「とりあえず、そろそろ夕飯だな。キミ、今晩は食べて行けるのか」
そう尋ねると芹沢は、ああ、と答えた。
「毎日ワリィな。いいのか?」
「母は大喜びだからいいのではないか」
「そういや、お前の親父とあの姉ちゃんは? 昨日もいなかったみてーだけど」
「父は仕事で少しばかりトラブってるらしく、休み返上で仕事だ。姉貴は彼氏とお泊まりデートらしい」
「げ、彼氏いんのか。確かにわりと美人みてーだけどよ……性格がちょっと……」
「お相手は弁護士だそうだ」
「マジか。どうやって知り合ったんだ」
「さて。自分ナシじゃイケない身体にしてやったと豪語していたが」
そう言うと、芹沢は「そんな細かい情報いらねぇ……」とげんなりした。
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