同じ家 16
撮影を終え、大喜びで映像をチェックする母と姉貴を放心してぼーっと見やる。
「おーい、大丈夫か?」
心配そうに芹沢が俺の顔を覗き込んだ。
「……口紅ついてる……」
「う」
芹沢は慌てて口元をこすった。
「実はママ、もう一つ撮りたいシーンがあるの。このページの、木陰での膝枕!」
「も、もう勘弁してくれないか……」
「こっちのシーンの方がいいんじゃない?」
「あ、姉貴は余計なことを言うな!」
放っておいたらどんどん難易度が上がりそうだったため、結局ミニスカートの男が膝枕という、罰ゲームのようなアンコール撮影で打ち切りにしてもらった。
俺の膝からむくりと起きあがった芹沢は、俺の足をじっと見つめていた。
「な、ひとつ聞いてもいいか」
「何だろうか」
「スカートの中、男もの? 女もの?」
「……どっちの答えを期待しているのだキミは」
「いやー、どっちにしろ笑ってやろうかと」
「ふん。男物だがビキニだ」
「ギャハハハハ!」
予告通り大笑いした芹沢を俺は思いっきり蹴り飛ばし、芹沢も甘んじて受けた。
それでも完全にツボにはまったようで、俺の肩に腕を回して、ゲラゲラ笑い続けていた。
「もう、ほんとに泣くぞ俺は」
「ふ……はは、ワリィ。何かもう、俺、すごく嬉しくてよー」
「何がだ」
「俺のために、お前がここまでしてくれたコト。俺の方こそ感動して泣けそうだ」
芹沢がギュウ、と俺の頭を抱きしめた。
「今日のコトは一生忘れねーよ」
「……俺としては、できれば忘れて欲しいものだが」
「忘れねぇ」
「ワースーレロ! ワースーレロ!」
「うおっ、変な念を送るな! おいっ、やめっ!」
二人でじゃれ合っていると、母が「本当に仲良しよねぇ」とうっとりした。姉貴も「予想以上にいいもの撮れたものねー」とツヤッツヤしていた。
そんな風に始まった俺たちの共同生活だったけれど……
楽しい日々は、実際にはそれほど長くは続かなかったのだ。
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