同じ家 11 俺の部屋に客布団を敷きながら、芹沢は「お前んちって、なんかほんとにいいよな……」と呟いた。 「ふむ? 何なら姉貴を略奪して結婚でもするか? もれなく俺の兄貴になれるぞ」 「そ、それは勘弁!」 「もしくはキミが性転換して俺の嫁になるか?」 「うおお、究極の二択……」 「まぁ、俺が性転換するという最後の手段も残されているが」 「……」 「いや、冗談であるからゆえ、真剣に考え込まないでくれたまえ」 「!! うわ、今マジで三択ならちょっと揺らいでた。アホか、俺」 「女になったキミは見たくないし、女になる気もないからな」 「俺だってねーよ」 芹沢は口をとがらせた。 「……話は変わるけどよ、明日からちょっと放課後寄れねぇわ」 「何か用事か?」 「用事っつーか。俺の住んでるアパート、取り壊しになるんだってよ……。大急ぎで次の部屋探さねぇと」 そう言って、芹沢はポケットからビラを一枚取り出した。 そこには老朽化と防火設備の欠落により、取り壊しが決定した旨が記載されていた。 「まー、床が抜けてるところとかもあったから覚悟はしてたけど、移り住んでまだ数ヶ月だぜ? はぁ……さすがにもう1万円台の物件はねーだろうなぁ……」 芹沢はため息をついた。 「しばらく実家には戻れないのか」 「俺の部屋を潰して兄夫婦の部屋になってるからよ、居場所はねーの。店長やってる叔父貴も、アパートに小さい子供2人だから甘えらんねーし……」 「そうか。ならばうちに来たらどうだ」 「……お前な。そういうコト、簡単に言うなよ」 「既に半分住んでるようなものではないか。明日の朝、両親に頼んでやる」 「マジかよ。……ほんと助かるけど」 芹沢がすがるように俺を見つめた。 「その代わり、うちの姉貴の存在だけは何とか我慢してくれ」 「お、おう……」 [*prev][next#] [戻る] |