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同じ家 10
「ワリィ。お前の分の上着も持ってくれば良かった」

 そう言って芹沢は自分の来ていたパーカーを脱いで肩にかけてくれた。

「あー、俺が女だったら、今のシチュエーションで完全に落ちただろうな」

「ギャハハハッ、俺に惚れるなよ?!」

 ふざけたように芹沢は俺をギューッと抱きしめた。

「ダーリン愛してるっちゃ」

「ギャハハ、どこのアニメキャラだ。うっさいわ」

「キミは温かいな」

「おう、あったまっとけ」

 芹沢は、隙間が無いくらいに身体を密着させて頬を寄せた。

「ちょっ……待て。近い、スリスリするな!」

「誰も見てねぇんだから、恥ずかしがるコトねーじゃん」

 そう言った途端にトラックが一台カーブを越えてきて、芹沢は慌てて俺を離した。

 バツが悪そうに星を見上げる芹沢に「そろそろ帰るか?」と尋ねると、ヤツは嬉しそうに頷いた。


 家にはまだ誰も戻っていなかったので、風呂に湯を張り、一番風呂を芹沢に勧める。

「お前の方が身体冷えてんだから、先に入れよ」

「帰りはキミのパーカー借りたのだから平気だ。客より先に入れるか」

「客とか言うな」

 俺も芹沢も頑として譲らなかった。

「……仕方ない。一緒に入るか」

「そうすっかー」

 もちろん色気のある事態に陥るわけもなく、「腹筋すげぇ」「お前はマッチロだな」などと言い合った後、交代で身体を洗って湯に浸かっただけなのだが、湯から上がった頃にちょうど戻ってきた姉貴が愕然とした顔で地団駄を踏んだのは言うまでもない。

 そのうち、帰り際に合流したらしい両親も二人仲良く帰ってきたが、芹沢の顔を見るなり大喜びだった。

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