同じ家 9 姉貴たちからの追跡を逃れるため、近場での食事を諦めて芹沢は自宅にバイクを取りに行った。俺はその間に姉貴を捕まえて叱った。 「ストーカー行為は慎んでくれ、姉貴」 「えぇ〜、タカちゃんのケチ!」 「児島さんも見てないで、姉貴の暴走止めてください」 「で、でも、二人がいい雰囲気だったから、僕も気になっちゃって……アハ」 「ねー。無自覚攻め、萌えるわよねー」 「萌えるねー」 「この、燃えるゴミどもめが」 「ああっ……尊志君の罵声も結構キュンとくる……」 うっとりした児島さんに俺はちょっと引いた。マジもんだこの人。 そのうち芹沢のバイクがやってきたので、ヘルメットを被って飛び乗った。 芹沢は国道沿いのファミレスに入り、ステーキとサラダのセットを頼んだ。芹沢が黙々と食べている間、俺はドリンクバーで時間を潰した。 「あー、まだこんな時間か。得した気分だな。この後、ちょっと夜景でも見に行かねぇ?」 「男二人でか」 「いいじゃねーか。俺、好きなんだよ、夜景」 結局押し切られて、芹沢と二人でドライブとなった。 暗い夜の坂道を登っていくと、カーブを越えた先に木々が急に開けたところがあった。 「おー、すごいな」 百万ドルの夜景、というのは大げさかもしれないが、自分の住む町がこんなに綺麗に見えるとは思わなかった。 「いいだろ。ムシャクシャした時とか、たまに来るんだけどよ」 「なんだ、今日もムシャクシャしてたのか」 「ちげーよ。お前に見せたかったんだ」 「……そうか」 夜景を眺める芹沢の横顔は、何だかすごく憧憬の色を帯びて見えた。 それから二人でしばらく夜景を眺めていたが、山の寒さにくしゃみが出た。 [*prev][next#] [戻る] |