同じ家 5
うちの高校は、基本的にバイク通学は禁止されている。
芹沢はこれまで本屋にバイクを停めていたのだが、どうせ毎日のように漫画を読みに来るのだからと、その日からうちの庭にバイクを停めるようになった。
芹沢が早めに来た日は、母が朝食にも誘った。昼は一緒に弁当を食べ、放課後は本を読んだりゲームで遊んだりして、夕飯を食べたら帰るという日常。
意外にも気を遣うタイプの芹沢は、バイトの給料が出たからと母に食費を渡そうとしたが、母はニコニコ笑うだけで受け取らなかった。
その週の金曜日。
芹沢はバイト先で一人病欠が出て穴埋めに呼ばれたとかで、放課後すぐに帰って行った。
その日は母も同窓会があるからと外出していたし、父も相変わらず残業だ。
さて、夕飯はどうするべきかと悩んでいると、姉貴から電話があり、外で一緒に食べることになった。
日曜に芹沢に選んでもらった服に着替え、駅前で姉貴を待つ。ほどなくして現れた姉貴は、一人の男性と一緒だった。
「どうも。お姉さんと親しくさせていただいてます、児島です」
姉貴の恋人は思っていた以上に年上で、いつまでもガキみたいなうちの親父より落ち着いて見える。どうしてうちの姉貴なんぞに……と思うくらい、優しく笑う人だった。
「初めまして……。弟の尊志です。お噂はかねがね」
「う、噂? 噂って?!」
急にたじろぐ児島さん。
「え……。いやまぁ、はは……」
適当に濁すと、大方を悟った児島さんは真っ赤になってうつむいた。
これまで姉貴の赤裸々な性生活を散々聞かされていた俺は、ぶっちゃけ居心地が悪い。
こんな紳士的な人が変態姉貴の手によってドMに開発されてしまったなんて、親御さんに申し分けなさすぎるのだが。
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