同じ家 4
校門近くまで一緒だった芹沢だが、「ちょっとヤニってくる」と離れていった。
……はっ、ヤニって、もしかして煙草か?!
しまった……気が付くのが遅れた。学校で吸うとは何事だ。
しかし考えてみれば、昨日は待ち合わせの場所で口にくわえたのを見かけただけで一度も吸ってはいない。随分と我慢していたのかもしれない。
一人で教室に入ると、クラスメイトの小山内が「待ってました!」とばかりに駆け寄ってきた。
「おはよう、小山内君」
「ちょっと太田君! 事件です!」
「な、何だろうか」
温厚そうな小山内がすごい形相で、俺はちょっと身じろいだ。
「芹沢君に彼女がいるかもしれないって!」
「……へぇ」
ん? さっき、芹沢は彼女はいないと言ってたような……。
いや、そもそもそれのどこが事件だろうか。
「なにが、へぇ〜だよ。そんな呑気にしてたら、ほんとに取られちゃうよ?! 太田君、みんなの期待を一身に背負ってるんだから!」
「……何の期待だって?」
「えへっ、それはその……ネ?」
小山内は照れながら可愛らしく首をかしげた。
あー。
ここに『腐男子』がいますー。
「もし芹沢君に彼女が出来そうなら、俺は応援するが」
「うー、何かもうちょっとこう違う反応を期待したんだけどなぁ」
「そりゃ期待に添えず悪かった」
「クラスの女子が昨日、芹沢君がデートしてるのを見たってショック受けてたよ」
……昨日?
「それは十中八九、俺であろうな」
「え? ……ええええっ?!」
小山内は大慌てでクラスの女子の元へと走っていった。
何かボソボソと言うと、女子と小山内はキャッキャッと飛び跳ねて喜んでいた。
……喜んでいただけたようで。はぁ。
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