同じ家 1
「おっはよう、わが息子よ!! ……へあッ?!」
月曜日。いつものように出勤前に起こしてくれた父が、変な声をあげた。
実は、その少し前に俺は目を覚ましていた。
というか、寝ぼけた芹沢がベッドから落ちてきた。直撃でこそなかったが、落ちた本人はそれでも起きなかった。
俺は芹沢の怪我が心配になり、頭の包帯をほどいた。しかし、眼鏡が手元になくてよく見えない。
そういや、昨晩寝る前に四苦八苦して使い捨てコンタクトレンズを外したもの、姉貴に奪われた眼鏡はどこに置かれたのだろうか。
仕方なく傷口辺りに顔を近づけ目をこらすと、完全に寝ぼけている芹沢が俺をギューッと抱きしめた。
運の悪いことに、その瞬間にわが父がドアを開けたというわけだ。
朝っぱらから男同士の抱擁を見せつけられた気の毒な父に、「眼鏡、その辺にないか?」と尋ねると、赤面しながらも机の上にあった眼鏡を渡してくれた。
眼鏡をかけて怪我を確認すると、傷口は化膿もせず、瘤にもならなかったようで、俺はホッとした。
「起きたまえ」
芹沢を揺すると、急に覚醒した芹沢が「うわあ!」と声をあげて跳ね起きた。
「び、びっくりした……」
「それはこっちのセリフだが」
「尊志、彼が芹沢君か?」
声を掛けられてようやく父に気がついた芹沢は慌てて向き直り、「ども。……オハヨーゴザイマス」と頭を下げた。
父は芹沢の前に正座をして、芹沢の手を両手でがっしり掴んだ。
「芹沢君……。うちの息子をこれからもよろしく頼む」
「え、あ、ハイ……」
「どうか末永く幸せにしてやってくれっ」
「ぅえええっ?!」
いきなりむせび泣く父に、芹沢は大混乱して俺に助けを求めた。
「父よ、俺を嫁にでも出す気か」
「……はっ、もしかして入り婿かっ?! それならそれでっ!!」
表情がパッと明るくなった父を俺は「とうっ!」と蹴った。
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