違う印象 20 「どうした、大丈夫か?」 「な、泣いてねぇしっ」 そう強がっていた芹沢だったが、瞼をぬぐう手の甲は涙で濡れていた。 「俺しか見ていないのだから気にするな。本当に心配かけたな」 「ちげーよ。ただちょっと……」 「ちょっと?」 「あー……俺にもわかんね」 芹沢は壁の方を向いたまま、ベッドにポスッと横になった。 「今日は色々あったが、すごく楽しかったぞ」 俺が毛布をかけてやりながらそう言うと、芹沢はこくりと頷いた。 「人と一緒に服を買うなんて母以外では初めての体験であった。父以外とプロレスを見に行ったのも初めてで、興奮を分かち合えて嬉しかった」 「……」 「友達など必要ない、と思っていた俺だが今日は本当に楽しかったのだ。キミさえ良ければまた一緒に遊びたいし、ずっと友達でいたいと思っている」 そう言うと、芹沢が顔を赤くしながらもこちらを向いた。 「お前って……天然だよな。平気な顔してこっ恥ずかしいコトを言いやがる」 「そ、そうだったのか? 嫌な思いをさせてすまなかった」 「いや、嫌じゃねぇけど。俺だって……その……、〜〜ッ、言えるかアホッ!!」 「キミは恥ずかしがり屋のツンデレだな」 「人を萌えキャラみたいに言うな!」 「ふむ。喧嘩してるキミは少々怖かったが、精悍でカッコ良かったぞ」 「俺はいつでもカッコイイんだよ!」 「そうだな」 「だ、だからよぉ……そこは突っ込むところだろぉ……」 耳まで真っ赤にした芹沢は、「このド天然!」とぼやいて毛布に潜り込んだ。 その後はいくら声をかけても返事をしなくなったので、俺も身支度を整え、「おやすみ」と呟いて電気を消した。 芹沢は初めて会った時と全く印象が違っていた。 他のクラスメイトと同じく俺も最初は芹沢が怖かったが、腹を割って話してみれば本当にイイヤツで、性格も可愛くて、素直になればきっとクラスの人気者になれるのになぁ、と俺は思った。 次章:同じ家 [*prev] [戻る] |