違う印象 18
姉貴が近づいてきて、俺の頭に顔を埋めた。
「タカちゃんってば、うちのじゃないシャンプーの匂いがする。キャッ♪」
「……想像するのは勝手だが、姉貴が喜ぶようなことはしていない」
「ええっ、芹沢君……ま、まさか不能なの?!」
「!!」
「姉貴……失礼も大概にしておけ」
何げに芹沢は傷ついた表情だったので、背中をポンポンと撫でてやった。
「ところで、救急箱はどこだったかな」
「なぁに? 怪我でもしたの?」
「ちょっとな」
芹沢の傷を消毒し、軟膏を塗ったガーゼを貼り付けて包帯を巻いた。
「これじゃ大怪我したみてぇじゃねーか」
芹沢が文句を言う。
「大怪我だろ?」
「ったく。お前の腕もちゃんと消毒しておけよ」
「キミだって十分に心配性だと思うがな……」
治療用具を箱に戻していると、姉貴が盆に水の入ったコップと薬を乗せて持ってきた。
「これ、鎮痛剤だから念のために飲んでおいてね」
芹沢が受け取ろうとした薬を、俺はバシッと叩き落とす。
「これのどこが鎮痛剤だと?」
「……チッ、勘が鋭くなったわね、タカちゃん」
全く油断も隙もない。
「大丈夫よ〜。どんなに疲れてても(息子さんが)元気になれる合法な薬よ!」
そんなことをのたまう姉貴の笑顔に、芹沢は今夜の大立ち回りが嘘のように怯えた表情を見せていた。
「姉貴ご自慢の年上の彼氏に使うに留めておけ」
「んも〜、せっかくのお泊まりイベントなのに……」
「道を踏み外すために呼んだわけではない!」
「タカちゃんのケチ……」
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