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違う印象 14
「すまない、芹沢君。俺のせいでややこしいことになって……」

「いや、巻き込んだのは俺だ……本当に大丈夫か?」

 不安げに怪我に目をやる芹沢に「心配するな」と笑顔を作ると、芹沢は少し泣きそうな顔になった。

 何だか捨てられた仔犬のようで、思わず芹沢の頭を撫でる。すると手に血がべったりついてギョッとした。見れば、芹沢の側頭部がうっすら血に染まっている。

 慌てて鞄の中からハンカチを取りだして血を拭いてやると、芹沢は目を細めてじっとしていた。

「うーわ。大人しい芹沢って何かキモチワルッ……」

 背後からの声に振り向くと、西山だった。久野も意識を取り戻したようで、驚いた表情で俺たちを見ていた。

「そちらの二人は大丈夫なのか?」

 俺が声を掛けると、西山が頷いた。

「キューちゃんは結構殴られてたみてーだけどな。ま、意識しっかりしてるし。あと1分待って出て来なかったら警察に垂れ込むとこだったぜ。無事で良かった」

「まさか芹沢が助けに来るとは思わなかった。……ありがとな」

 二人が頭を下げると、芹沢は怒ったように舌打ちをした。

「照れなくてもいいではないか」

 俺がそう言うと、芹沢はカーッと赤くなった顔を手で覆う。

「て、照れてたのか?!」

「わかりにくっ」

「そうでもないぞ?」

「いいからテメーは黙れ」

 芹沢が照れ隠しなのか、俺の頭を小突いた。

「……うっ?!」

 ぬるっという感触に芹沢が硬直した。

 そういえば、あの林って男に拘束された時から、俺の後頭部と背中から酸っぱ〜い匂いがしているのであった。恐らく、俺の背後はゲロまみれだ。

 西山と久野も可哀想なものを見る目になっていた。

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